67 / 454
第四話 後輩たちの言い分
04
しおりを挟むクソ……! コイツ、いつもいつも神出鬼没で気がついたらそばにいやがる。
俺の寿命によくねぇ。こう、ちょっとずつ出てこい。マジで。
和気藹々と話している二人を尻目に紙パックのカフェオレをジュウウウ、と飲む。カフェオレでジャムパンを胃の奥へ流し込んだ俺は、息も絶え絶えにどうにか現実へ生還した。
「こ、この欲求不満ド変態……!」
「まあ確かに欲求不満ですよね。今すぐ御割先輩の口に焼きごてを突っ込みたい欲求過多です。この勘違い残念ド変態が」
「それが先輩に対する発言か!」
痩せたパックを少々乱暴にテーブルへ置き、フンッ、とふてくされる。
この男には一返すと十投げられるのだ。ホワイトデーの三倍返しの比じゃねぇぞ。
食事を終えた後なのか手にはなにも持っていない三初だが、ふてぶてしいことにのっしりと俺の背中へ乗りかかってきた。
「オイなにすんだ。どけやがれ」
「今のって八坂からですよね。ワッフル一つで行くんですか」
「聞けよ」
「おー? シュウはワッフル一つでどこでも行くなぁ。ザラメのついた大きいやつなら、飴玉一つでも雑用一つやってくれるぜ。俺も何度購買のパン買い競争委託したか……」
「それは昔の話だろうが」
「昔からチョロかったんですね」
言わせておけば、このマイペースコンビめ。誰がチョロいんだよコラ。
甘いものは全世界で愛される素敵なものだろうが。俺が愛してなにが悪い。ケッ。今は飴玉一つじゃ動いてやらねぇかンな。舐めんなよバカヤロウ。
ドスの効いた声でそう言うと、冬賀は「今ならなに渡せばパシられてくれるんだ?」と小首を傾げた。
まあ今なら当然、チョロルチョコのバラエティパックだろ。
大人の俺を使うんだから、大人の財力を使ってもらわねェと割に合わん。
「断る選択肢ないのか」
「こういうところがかわいいだろー」
「まぁ愉快ですよ。体臭が甘いので甘党は隠しきれてませんし」
「お、そういえば昔から甘かった。ミハは鼻がいいな」
「そうですか? 周馬先輩はそば臭いです」
「まじでか。んじゃお前はどうだろ。おいシュウ、ミハの匂いを嗅いでくれよ」
「断固お断りだしお前らは人を自然体で小馬鹿にすンのやめろ。というか俺を小馬鹿にすンのをやめろ大馬鹿マイペースコンビが」
あんぱんに続き残りのジャムパンも全て胃に収め、俺は連続休日出勤をこなした後と同じくらい死んだ目でズバッと冷たく言い捨てた。
「要ーどこだよー! もう帰ろうよー!」
そんなカオスな空間に聞き覚えのある貧弱な声がととして響いた。
暴君の幼馴染みとして日々苦労しているかわいいほうの後輩の声だ。悲鳴じみたそれが聞こえた気がして、キョロキョロと周囲を見回す。
どこかと思えば、案の定食堂の返却口のあたりで「なんで三日に一回ぐらいしかじっとしといてくれないんだよー!」と叫ぶ平々凡々な中肉中背の地味男がいた。
やっぱりあれは、いつも暴君に小馬鹿にされている三初ベテラン被害者──出山車 真じゃねぇか。だと思ったぜ。
ということはこの野郎、後片付けを押し付けた上で許可なく俺たちのいる場所に来たのかよ。
なんてやつだ。
俺はまだしもそういうのばっかはダメだろ。友達大事にしろよ。いつか三初は友達がいなくなるし、出山車がかわいそうだろうが。
……というのもそれなりに何度も言っているが、一切聞かないところが三初が暴君たる所以である。
10
お気に入りに追加
1,376
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
僕が玩具になった理由
Me-ya
BL
🈲R指定🈯
「俺のペットにしてやるよ」
眞司は僕を見下ろしながらそう言った。
🈲R指定🔞
※この作品はフィクションです。
実在の人物、団体等とは一切関係ありません。
※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨
ので、ここで新しく書き直します…。
(他の場所でも、1カ所書いていますが…)
新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~
焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。
美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。
スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。
これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語…
※DLsite様でCG集販売の予定あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる