58 / 454
第三話 概ね普通の先輩後輩
23
しおりを挟むしかしながら三初は人間性を犠牲にしたのかそれほど頭も要領もいいくせに、絶対に自分にと言われた仕事以外はしない。
業務外のコミュニケーションや世辞やオブラート、社会人としてってやつも必要最低限にしか使わない。持ってんのによ。
初めて会った時はもう少し全ての人間に対して完璧な猫を被っていた……ような気がする。いや、初めから全開だったかも。わかりにくいからよくわかんねぇ。
プライベートは知らんけど、出山車以外のやつとつるんでるのも見たことねぇな……実は友達いないのか?
でもそれって、変な話だ。
俺は顔が怖いし態度も悪いし不器用だからそれほど交友関係は広くないが、それなりに付き合いはある。
俺より断然好かれそうな生き物なのに、人を遠ざける三初はよくわかんねぇ。
そう思うと少しだけ、こんな関係になったというのに自分が遠ざけられるのは嫌だな、と思った。深い意味はなく。
好き勝手踏み込むくせに自分はお断りとかムカつくってだけだけどよ。
「──ん?」
もそ、と寝返りをうって三初側に体を向ける。ラブホの広いだけのベッドでも我が家のごとく悠々と寝そべる三初。
元々、コイツの考えていることが、ちゃんとわかったことはなかったな。
人間嫌いなのかと思ったけれど、俺には構ってくる。別に俺が特別とかそんなんじゃねぇ。気まぐれなだけで、自主的に他人に絡んでる時もあったと思う。
心を開かれている気はしないのだ。ことこいつに関しては、言葉が意味を持たない。
行動でお察しとも言うが、行動すらひねくれた動きをする。
「……なんでガン見?」
「や、頭透けて見えっかなってよ」
「透けて見えませんけど先輩の頭は空っぽですよね」
あぁッ? チッ、暴言はこの際無視だ。
うつ伏せに肘をつく三初を見上げるような体勢だから見下されているようで少し気に食わないが、それもよしとする。
会社でいる時に比べると、近ごろ俺と二人の時の三初は、割と素だと思うのだ。
本人もそう言っていた気がする。
素、とか思うのは、三初がわざと周囲と距離を取ってるっていう、俺の仮定を正解とした場合だぜ?
三初の素。というか、本心。
こうして俺の中に侵食してきたのはあの日がきっかけだが、俺をからかってばかりなのは昔からだ。
その原動力がなんなのか。
もしかしたら、元々俺には自然体だったのかもしれない。
それって……もしかすると。
(……、……マジか)
三初の弱点を考えていたはずなのに、気がついたらそんなことを思っていた。
ストン、と納得がいく。
考えないようにしてたけど──ちゃんと考えれば、俺を連れ回すことも、俺を抱いたことも、理由はそのあたりにあるのだろう。
スっと手を伸ばして、腕の隙間から三初の胸に控えめに触れてみる。
「っ、……は……?」
俺から触れることなんか本当に稀だからか、三初はビクッと微かに震えて目を丸くした。
お。珍しい。
コイツの予想外の行動で意表をつけたっぽくて、なかなかいい気分じゃねえか。
今日の三初はレア行動が多いな。まぁ二人きりで普通に出かけるなんて、今までなかったし。
それでも散々弄ばれて負けっぱなしだった俺は、機嫌が良くなる。ニヤリと笑ってしまうのは仕方のないことだ。
「先輩……?」
「なんだよ、触られただけでドキドキしてんじゃねぇか。そんなに好きか?」
「──ッ……!? は、嘘、誰が、なに」
指の腹でスリスリと肌をなでつつ、仕返しも兼ねたセリフをお見舞いしてやった。
胸板が結構ある。やっぱりちくしょうめ。
10
お気に入りに追加
1,388
あなたにおすすめの小説



イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる