誰かこの暴君を殴ってくれ!

木樫

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第三話 概ね普通の先輩後輩

03※

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「あッ、あ、や、いやだ、ひっ、ぅぁ……っ」


 肌同士がぶつかる絶え間ない破裂音が響き、俺は悲鳴をあげて容赦のない突き上げに身悶えた。

 ベッドがギシギシと煩い。
 内壁をゴリゴリと肉の杭に穿たれるたびに、張り詰めた屹立から先走りが零れ落ちてシーツを汚す。

 必死に腕に力を入れるが揺さぶられるたびに胸のクリップも揺れ、その揺れが乳首にも伝わる。
 重力で摘まれた肉が皮膚ごとひっぱられ、取れてしまいそうだ。

 三初に触られなくとも突き上げとともに体を前後に揺さぶられるだけで、乳首を捻られている感覚が襲う。

 そのうちコールドスプレーで冷えた乳首が火照る自分の体温で溶かされていくと、麻痺していた乳頭の感覚が、鋭敏さを取り戻し始めてしまった。


「っぁ、あっ……ぁ、ぅく……っ」


 じくん、じくん、と挟まれた箇所が膿を持ったように熱を持ち、脈動する。

 心臓の鼓動に合わせて送り込まれる血液がクリップで塞き止められ、痛みと共に、酷く抗いがたい瘙痒感が小さな突起二つに訪れる。

 まずい──触ってほしい、なんて。


「待て、これ、あッ、取って、ゆっくり取れ……ッあ、ヒッ……んッ……んんッ」

「はっ、こんなに感じまくってるのになに言ってんですか? ほら、ガチガチ。シーツに水溜まり作っちゃって、激しくされながら乳首揺らしてんの気持ちいいくせに」

「! やっ、やめろ、っあ、みっ三初ぇ……っ」


 言いながら前立腺をカリ首の反り返りで強く擦りあげられ、俺は身悶え、乳首をクリップごとチャリッチャリッと揺らした。

 男に犯されてチェーンを振りながらクソほど感じる自分の姿を想像すると、恥辱で燃え尽きて焼死しそうだ。


「んぁっ、と、取れって……っ突くなっ、あっ、う、あぃ、っ、くそぉ……っ」


 膿んだように脈打ち、ジクン、ジクン、と痛みと快感をもたらすこれを、一刻も早く取ってほしい。
 切れ切れの悲鳴の中で懸命に抗う。

 するとガツガツと貪るように犯していた三初が不意に手伸ばし、足の間で濡れる俺の性器を掴むと、乱暴に扱き始めた。


「あぁぁ……っ! ぁっさっ触んな、む、胸が、ぁっ……嫌だってぇ……っ」

「くく、俺もいーや。先輩、頼み方がダメって言ったでしょ? もっと考えて。俺が言うこと聞いてあげたくなる言い方でお願いしますよ、ねぇ、先輩」

「ンなのわかんな、っひ……っあぁ、こ、こんなのでイキたく、ねぇ……っちぎれるから、も、取れってよぉ……っ!」


 絞り出すように巧みに追い詰められる肉棒がドグッ、と脈打ち、大きさを増す。

 そこを触ってほしいと言ったわけじゃないのに抗議はできず、俺は直接的な刺激にのたうち、甘ったれた情けない懇願を繰り返す。

 それほど手酷い扱いを受けているのに、キュン、と腹の奥に疼きを感じ、悔しさから唇を噛み締めた。


「と、取れ、取って……っひ、うあっ、ぁ、と、っ……取、ってくれ……っ」


 あぁもう、最低だ。
 コンチクショウ。

 いっそ乱暴に痛めつけて強引に命令されれば心底嫌悪して蹴り飛ばしてやれたのに、コイツは俺を必ず快感の沼に堕とす。

 セックスに誘う時はこれみよがしにスマホの画面を見せつけて、ニヤニヤしながら「わかるでしょ」と脅すくせに。

 暴君極まりない行動と発言をするこの男は、性欲処理というにはあまりに時間をかけて、趣向を凝らし、丁寧に抱くのだ。

 だから〝脅迫に負けて抱かれてやっても開き直ってストレス発散に使ってやるからな〟という跳ねっ返りの思考回路が、崩れ落ちていく。

 この後輩は、俺の思い通りにならない。


「──……取って……くだ、さい……っ」


 認めたくないが……俺はあれから、オモチャとしての役割をしっかり務めされられる日々を、送らされてしまっているのだ。




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