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第十話 悪魔様は人間生活がヘタすぎる
05
しおりを挟む流れ弾に当たった九蔵のメンクイ病の更に流れ弾に当たったニューイを圧倒的よいしょしておく九蔵に、ビルティはむんと腕を組む。まだ言い足りないのか。
「オレヤスアキなれる。ゲーム要らない。酒はまぁ酔うないけどトカゲカワイイからヘーキ。髪長い抜け毛いっぱい。だからオレのがじょうず。オレのがお買い得。お金ないでもオレはナスとこ出てくるのに爆死する変思う。ムカツクから消すした。オレえらい思う。ナスのお金守るした。限定カード? は、なくてもオレがするからイイ」
「要するに〝オレ悪いない〟って?」
「ない」
「待てコラ悪いしかねぇスよクリスマスカード限定ストーリーはヤスアキたんとの無農薬お野菜ファームで自然派デートのち貸しペンションで一夜過ごすフルボイスドスケベストーリーと夜のスチル付きだってのにあと俺はマゾじゃねスむしろ踏む側スッ!」
キパッと断言するビルティへ白米が止まらない澄央の顔つきが般若に変わり、二人の間でバチバチッ! と火花が散った。
まさに一触即発。
おっと修羅場か? 勘弁してくれ。
危機を察知した九蔵が、オロオロと無音で傍観するだけのニューイ(悪魔バージョン)のそばへそろ~っと移動する。
「踏む側? 人間が? ならナスオレ踏めばいいだけ。簡単」
「そういう問題じゃねーって言ってるんスよ人間舐めんなトカゲイケメン。踏まれたいならそう言えよ地面にキスさせてやっから」
腕を組んでハッと鼻で笑うビルティ。
口角を上げて挑発する澄央。
カーンッ! と鳴り響く戦いのゴング。
さぁやってまいりましたマイペースワガママボーイズこと末っ子VSトカゲのインファイト──レディ、ファイッ!
「人間舐めるよ? トカゲ舌長い舐める好きそういう生き物。ナスのどこも舐めれるオレ、ヤスアキ要らない」
「ふざけんなコラ。ヤスアキたんは概念なんス。ビルティとヤスアキたんじゃ存在意義が違うじゃないスか。代わりにならんしする気もねぇス諦めろん」
「諦めろんない。オレヤスアキ嫌い。憎い。同じキャラクターでもオレ許さない嫌い。存在意義勝手するいい。けどナスに好かれる存在意義ないぜ? あるならオレ貰う。だからヤスアキはオレに殺されるべき。仕方ないね」
「仕方なくねんスけどちょっと話通じない過ぎてボディランゲージに訴えそう」
「訴える? いーよ? でも代わりでゲーム全部消すしていい?」
「いいわけあるかいいい加減にしろよコノヤロウ秒でスマホにロックかけたわ消したいなら俺を殺していくッス!」
「!? ナス殺すないなんで酷いこと言うするトカゲイジメいくないぜ!」
「俺イジメもいくないスよ!」
「イジメるないオレナス愛してるっ! だからゲーム消すしたいだけっ! ナス殺すしないっ! ズルいっ!」
「ズルくねっスむしろズルいのビルティス! そうやって好きだから愛してるから俺に譲れ譲れってマイペースワガママボーイの俺にどんだけ苦行強いてくるんスか矛盾の塊スわもういっそ俺愛するの禁止スね! 禁止!」
「きっ……!? き、禁止いくない! ナスやめて! 禁止いや! 禁止ない!」
「いーや禁止ス! 禁止! すぐ愛してる言うくせにその俺に一ミリも主張を譲らねぇってのは、好きだけど自分の嫌なことはしませーんって自己中の範囲でテキトーに所有したがってるだけス! 俺は野良スから! 強いて言うならココさんちの子ス! 俺を縛って自由に動くなんざマジ許さねぇこちとら末っ子だぞコラ!」
「難しい! わかるないこと言うない! アリス、アリス助けて、アリス……っ」
「あぁッ!? すぐココさん任せにすんじゃねぇスよッ!」
「へぅっ、く、黒ウサギっ、助けて黒ウサギっ、ちょっと待って言ってっ? いいっ? オレアリス話して考えるするの頑張るから黒ウサギナスマテ頑張ってっ? いいっ? いいっ?」
「ニューイもダメスッ!」
「ヒっ、ア、アゥァ、ァワ……っ」
──カンカンカンカーンッ!
試合終了。
勝者、真木茄 澄央。
クワッ! と一喝する澄央と長い巨体を縮こまらせてあうあうと鳴くビルティの間で、 ノックアウトのゴングがキマった。
二人の暴論の殴り合いを見守っていた九蔵は、下手に口を出して叱られたくないお口ミッフィーちゃんのニューイと共にパチパチと拍手を送る。
結局、惚れたほうが負けるのだ。
知っていた。経験者にて。
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