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第十話 悪魔様は人間生活がヘタすぎる
01
しおりを挟むおはよう諸君。
こちら個々残 九蔵である。
真夏に起こった悪魔と陰キャのちスーパーアイドルところによりいじめっ子ネズミによる恋と仕事と嫉妬のしっちゃかめっちゃかから季節がめぐり、早いことにいつの間にやら冬が始まっていた。
年々秋が短い気がする。
暑いと布団を蹴り飛ばしているうちに寒いと布団を剥ぎ取る朝がくるとは。
暑さとも寒さとも仲の悪い九蔵は、一年の大半が省エネモードだ。
デフォルトで顔色も悪ければ動きも鈍い。冬は腹が減るわりに動く気にならず、夏は夏バテで食欲がないので動けない。
四季折々うんぬんかんぬん。
生まれる国を間違ったとつくづく思う。来世はネバーランドの住人に生まれよう。
「そうかい? なら私はネバーランド政府が悪魔にビザを発行してくれることを祈ろうかな。チンカーベルやピーターライスは悪魔に偏見がないと嬉しいである。今度遊戯室のドアからお邪魔してみるのだよ!」
「あぁうんそう言えばアレもおとぎ話のジャンルでしたね」
二人揃って休日の今日《こんにち》。
いつも通りの朝ごはんタイム。
なんの気ない話題の陽気な返答に、九蔵は映えスウィーツのカロリー表を見てしまったような苦い気分でもそもそとジャムパンを食べた。
幼い頃に憧れたメルヘンの世界は、現実じゃあ悪魔のお城のお遊戯である。
大人ならみんな夢見るネバーランドとて、実在するただの舞台にすぎないのだろう。
そうして九蔵がりんごジュースをすすると、アンパンを貪っていたニューイがニヘラと笑った。
うん。つぶあんの皮が歯についていてもニューイさんはイケメンです。
「なぁに、メルヘンはメルヘンさ。遊戯室の遊戯たちはそのメルヘンをもとに悪魔王様が生み出したもので、ビルティだって白ウサギたちだってそうあれと生まれた概念なのだぞ」
「概念?」
「うむ」
つぶあんをキラメかせたままニコニコ語るニューイが言うには、遊戯室のキャラクターたちは贋作らしい。
悪魔王が名作の魂を集めてそこから復元し、登場人物の概念を具現化した存在だとか。もちろん世界自体もしかりだ。
トカゲのビルティはトカゲのビルティの概念から生まれた。
なのでアリスちゃんの世界の中では、トカゲのビルティの役目をこなす。
そこに疑問はなく、人間が自分の意思で自分の鼓動をオンオフと切り替えられないのと同じようなものだそう。
確かに。
別に意図的に心臓を動かしているわけじゃなく、生まれたときから動いていた。
今は止めておこうと一時停止はできない。生きるも死ぬも、凶器や医療機器やと外部からの刺激が必要だろう。
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