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第八話 あっちこっちトラベル

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 いやもうバレバレだ。

 お約束展開過ぎて、九蔵は自分の思考が無意識にこの世界へ影響でも与えているのかと思ったほどである。

 そして隣の悪魔様よ。
 腕の中の白モフよ。

 満面の笑みを浮かべて「ほら言ったじゃんすぐ解決するって!」と言いたげなオーラを醸し出すんじゃない。

 これは特殊な例なのだ。通常あり得ない。ノーマルなら常識人な自分の言い分が正しいに決まっている。ここだけは譲ってやるものか!


「ラスボスかと思ったら村人Aとか、侍感満載だったくせにエクソシストとか……ござる関連はいつも俺の予想を裏切る……ッ!」
「な、なぜ出会って三秒で深淵アイズ?」
「待っていたのだウサギさん!」
「待っていたのさウサギさん!」
「なぜお主らは大歓迎!?」
「拙者も某も一緒じゃねぇかッッ!!」
「いやなんの話じゃ────!?」


 九蔵の腕からぬけだしたシッポとニューイが手と耳を取り合ってわーいわーい! と踊る隣で、スパコンッ! と自分の膝を叩き悔しがる九蔵。

 それを見ているウサギは目玉をひん剥くが、九蔵は知ったこっちゃない。

 こちとらファンタジーやメルヘンな生き物はみんな一般人に優しくないという現実にメンタルをやられているのだ。

 気をつけろ。語尾がござるは、アレなヤツ。
 九蔵、心の俳句。

 ──そんなわけで。

 踊るニューイとシッポ、愚痴る九蔵、それをただ見ていることしかできないウサギの奇妙なメンツが落ち着くまで、しばらくかかった。

 このままじゃ話が進まない。しかしそれをよしとする九蔵さんではない。

 順応体質の九蔵が無言でのっそりと立ち上がり、騒がしい人外たちをギロリと目力で引率し、森のそばの人気のない洞窟へ移動する。

 無言で「俺に着いてくるか死ぬか選べ」とばかりの闇堕ち視線(自前)でウサギ二匹とヒヨコ悪魔の首根っこをひっ捕まえる九蔵に、逆らえる者はいなかった。

 個々残 九蔵。

 悪魔とラブコメを繰り広げ悪魔な友人と悪魔な同僚を持ち、トカゲ男に頼られ迷惑白ウサギーズに泣かれる男。

 トラブルとドッキリで鍛え上げられたコミュ障陰キャフリーターは、いつの間にやら不屈の人外耐性を取得していたようだ。

 全く嬉しくない。
 心の底から返品したい。
 常識を知れバカヤロウどもめ。

 そんな九蔵の悲痛な叫びはさておき、洞窟に移動した面々は、突然飛び出してきたウサギの事情を聞かされることになった。


「あれはそう……ノロマなカメをからかってやろうと、某が長距離徒競走勝負を申し込んだ日であった……」
「マラソンバトルな」


 足に自信があったウサギは、カメとのマラソンバトル中に昼寝をしてしまい、サクッと負けたのだ。

 悔しさを胸にウサギ村に帰ったウサギを出迎えたのは、村のウサギたち。

 ノロマの代表格であるカメに油断して負けたウサギは、村のウサギたちに叱られ、しばらく帰ってくるなと村を追い出されてしまった。

 そうして許してもらえるまで自業自得のぼっち生活をめそめそ送っていたウサギだが、ある日、風の噂で〝オオカミがウサギ村を襲ってやめてほしければ子ウサギを貢げと脅している〟という話を聞く。

 こうしちゃいられない。
 これは神が与えたチャンスだ!

 ここで汚名を返上しウサギの名誉を挽回すれば、ウサギ界の英雄として村の仲間に戻れるどころが華々しく凱旋できるじゃないか。

 そう考えたウサギは意気揚々と村へ行って「オオカミ退治は某に任されよう! 成功の暁には某を無罪とし崇めたまえ!」と大口を叩いた──……が。


「そのオオカミが想像の三倍オオカミで全然無理だったのでござる」
「こんなに格好悪いウサギは初めて見た」


 語り終えると共に華麗な土下座を披露するウサギに、九蔵は微妙な視線で砂色の耳を見下ろした。




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