上 下
314 / 462
第七話 男たちのヒ・ミ・ツ

14

しおりを挟む


「え~? 嫌がられると全身巻きついて拘束監禁プレイしたくなんだけど~」

「巻きついてもいいけど、お酒はダメだってぇ……ズーズィのせぇで、だらしない体に戻るかもしんねぇよ」

「ボクのせい違いますゥ! クーにゃんがちゃあんとお断りできねーからっしょー?」

「俺、やだって言っただろぉ」

「断り方がクソカス弱弱なんだよなぁー。ニュっちがまたプリンどーぞとかケーキどーぞとかしたらどうすんのー?」

「えぇ~……? 食べちゃう」

「ほぉらぁ~! せっかく駄肉燃焼しても食べたら意味ないじゃん! な、ん、で! わざとねちこくお誘いしたのぉ」


「ボクってヤサシー!」とワインボトルを煽るズーズィに、九蔵はボスンッ、とソファーへ倒れ込んだ。

 図星を突かれた。
 辛い。飲んだくれたい。

 だけどそもそも自分がきちんと断れる人間だとしても、ニューイがよかれとくれたものをお断りできるわけがないじゃないか。

 他人であればさり気なく断れる。
 だが、好きな人はズルい。ズルいのだ。


「だから、ズーズィも断れねぇの」

「ン~?」

「だって友達、だろ? ンフ。好きだから、いっしょに飲みて、かったんでぇ……俺にもワイン、ちょうだいです」

「アハッ! お前ホントボクら以外と飲むのダメダメねぇ~? お持ち帰り余裕無防備マンすぎてウケるわぁ。ニュっちが哀れで爆笑が止まんねーからっ」

「え~……? でも俺、ニューイなんか知らねんだぁ」


 九蔵はゴキゲンなズーズィから白のワインボトルを与えられ、起き上がりつつ拗ねて見せた。

 ズーズィが「お? ニュっちマンセーのクーにゃんがニュっちにへそ曲げてんの、珍しいじゃーん!」と瞳を輝かせて迫る。

 楽しいことなんてなにもない。
 ニューイの愚痴が溜まっているだけだ。

 なんせ九蔵に秘密を作っているし、拗ね方がしつこくて子どもっぽい。


「マ? ヒミツってなぁに?」

「知んねぇ……でも、夜中にこう、コソコソって消えちまうんだぜ」

「あ、それね。把握」

「俺さんとしてはぁ、たぶんドゥレドとイチャイチャしてんだろー……って。ニューイ、夜にゲームしたがるから、ほらぁ……最近マルカとかも? やったことなかったくせに、嘘つくの下手っぴでさぁ……うひっ。かわいいけどさぁ……」

「ワーオ、名探偵クーにゃん! ニュっち既に哀れだった件について」

「あ~……ニューイかわいいよ~」

「アハッ! ボクのがかわいいよ~!」


 ニューイの特訓がモロバレだったことを察したズーズィに、九蔵はコツンと肩を預けながら甘えた声をあげた。

 グリグリとズーズィに額を擦りつけつつ、酔いどれ九蔵は管をまく。


「ニューイちゃん、バーカ。俺をいちばん、頼ってくんねーの……?」

「クヒッ。そっちに妬くんかーい」

「うん、妬くよぉ……だから筋トレしてんですぅ。ほーよー力とか、なんか、俺もほしーんだよなぁ……いーこいーこって」

「えー? それならたぶんもうあると思うケド、とりまボクにいーこいーこしとく?」

「あはっ、ズーズィ悪い子だろぉ~?」

「じゃあ悪い子悪い子でいーよ?」

「わは。悪い子悪い子」


 ズーズィの肩に回した腕を捻り、九蔵はズーズィの頭を雑にワシワシとなでた。

 もともとニューイ以外にはほぼ自主的に触れない九蔵。
 ニューイと触れ合っていない今なのに、ズーズィにこうして触れることは自分でもあまり躊躇がなかった。

 ニューイ相手なら「二の腕のプニ感がバレる!」と危惧し完全回避する。

 それだけニューイにはええカッコ・・・・・をしたくて、プニ感がバレたくない唯一無二の相手ということだ。

 ズーズィと撫であいを繰り広げながら、九蔵は密かに自分の恋心の一途さをフムフムと実感する。

 とはいえ、絶賛強制お触り回避フェスティバル中のニューイからすると九蔵とじゃれ合えるズーズィが羨ましすぎて、それどころじゃないだろう。

 泣きながらしがみつきそうだ。
 ジェラシー関連ではないのだが。

 乙女コンテンツなら確実に嫉妬の炎でズーズィごと燃やされる展開なこの状況。
 ニューイは共通の友人にはヤキモチを妬かないので、いつも平和である。

 けれど、それもよく考えると──九蔵はちょっぴり不満な気がした。




しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

都合の良いすれ違い

7ズ
BL
 冒険者ギルドには、日夜依頼が舞い込んでくる。その中で難易度の高い依頼はずっと掲示板に残っている。規定の期間内に誰も達成できない依頼は、期限切れとなり掲示板から無くなる。  しかし、高難易度の依頼は国に被害が及ぶ物も多く重要度も高い。ただ取り下げるだけでは問題は片付かない。  そういった残り物を一掃する『掃討人』を冒険者ギルドは最低でも一名所属させている。  メルデンディア王国の掃討人・スレーブはとある悪魔と交わした契約の対価の為に大金を稼いでいる。  足りない分は身体を求められる。  悪魔は知らない。  スレーブにとってその補填行為が心の慰めになっている事を。 ーーーーーーーーーーーーー  心すれ違う人間と悪魔の異種間BL  美形の万能悪魔×歴戦の中年拳闘士  ※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。※

朝目覚めたら横に悪魔がいたんだが・・・告白されても困る!

渋川宙
BL
目覚めたら横に悪魔がいた! しかもそいつは自分に惚れたと言いだし、悪魔になれと囁いてくる!さらに魔界で結婚しようと言い出す!! 至って普通の大学生だったというのに、一体どうなってしまうんだ!?

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件

水野七緒
BL
ワケあってクラスメイトの女子と交際中の青野 行春(あおの ゆきはる)。そんな彼が、ある日あわや貞操の危機に。彼を襲ったのは星井夏樹(ほしい なつき)──まさかの、交際中のカノジョの「お兄さん」。だが、どうも様子がおかしくて── ※「目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件」の続編(サイドストーリー)です。 ※前作を読まなくてもわかるように執筆するつもりですが、前作も読んでいただけると有り難いです。 ※エンドは1種類の予定ですが、2種類になるかもしれません。

有能社長秘書のマンションでテレワークすることになった平社員の俺

高菜あやめ
BL
【マイペース美形社長秘書×平凡新人営業マン】会社の方針で社員全員リモートワークを義務付けられたが、中途入社二年目の営業・野宮は困っていた。なぜならアパートのインターネットは遅すぎて仕事にならないから。なんとか出社を許可して欲しいと上司に直談判したら、社長の呼び出しをくらってしまい、なりゆきで社長秘書・入江のマンションに居候することに。少し冷たそうでマイペースな入江と、ちょっとビビりな野宮はうまく同居できるだろうか? のんびりほのぼのテレワークしてるリーマンのラブコメディです

処理中です...