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第七話 男たちのヒ・ミ・ツ
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しおりを挟む「え~? 嫌がられると全身巻きついて拘束監禁プレイしたくなんだけど~」
「巻きついてもいいけど、お酒はダメだってぇ……ズーズィのせぇで、だらしない体に戻るかもしんねぇよ」
「ボクのせい違いますゥ! クーにゃんがちゃあんとお断りできねーからっしょー?」
「俺、やだって言っただろぉ」
「断り方がクソカス弱弱なんだよなぁー。ニュっちがまたプリンどーぞとかケーキどーぞとかしたらどうすんのー?」
「えぇ~……? 食べちゃう」
「ほぉらぁ~! せっかく駄肉燃焼しても食べたら意味ないじゃん! な、ん、で! わざとねちこくお誘いしたのぉ」
「ボクってヤサシー!」とワインボトルを煽るズーズィに、九蔵はボスンッ、とソファーへ倒れ込んだ。
図星を突かれた。
辛い。飲んだくれたい。
だけどそもそも自分がきちんと断れる人間だとしても、ニューイがよかれとくれたものをお断りできるわけがないじゃないか。
他人であればさり気なく断れる。
だが、好きな人はズルい。ズルいのだ。
「だから、ズーズィも断れねぇの」
「ン~?」
「だって友達、だろ? ンフ。好きだから、いっしょに飲みて、かったんでぇ……俺にもワイン、ちょうだいです」
「アハッ! お前ホントボクら以外と飲むのダメダメねぇ~? お持ち帰り余裕無防備マンすぎてウケるわぁ。ニュっちが哀れで爆笑が止まんねーからっ」
「え~……? でも俺、ニューイなんか知らねんだぁ」
九蔵はゴキゲンなズーズィから白のワインボトルを与えられ、起き上がりつつ拗ねて見せた。
ズーズィが「お? ニュっちマンセーのクーにゃんがニュっちにへそ曲げてんの、珍しいじゃーん!」と瞳を輝かせて迫る。
楽しいことなんてなにもない。
ニューイの愚痴が溜まっているだけだ。
なんせ九蔵に秘密を作っているし、拗ね方がしつこくて子どもっぽい。
「マ? ヒミツってなぁに?」
「知んねぇ……でも、夜中にこう、コソコソって消えちまうんだぜ」
「あ、それね。把握」
「俺さんとしてはぁ、たぶんドゥレドとイチャイチャしてんだろー……って。ニューイ、夜にゲームしたがるから、ほらぁ……最近マルカとかも? やったことなかったくせに、嘘つくの下手っぴでさぁ……うひっ。かわいいけどさぁ……」
「ワーオ、名探偵クーにゃん! ニュっち既に哀れだった件について」
「あ~……ニューイかわいいよ~」
「アハッ! ボクのがかわいいよ~!」
ニューイの特訓がモロバレだったことを察したズーズィに、九蔵はコツンと肩を預けながら甘えた声をあげた。
グリグリとズーズィに額を擦りつけつつ、酔いどれ九蔵は管をまく。
「ニューイちゃん、バーカ。俺をいちばん、頼ってくんねーの……?」
「クヒッ。そっちに妬くんかーい」
「うん、妬くよぉ……だから筋トレしてんですぅ。ほーよー力とか、なんか、俺もほしーんだよなぁ……いーこいーこって」
「えー? それならたぶんもうあると思うケド、とりまボクにいーこいーこしとく?」
「あはっ、ズーズィ悪い子だろぉ~?」
「じゃあ悪い子悪い子でいーよ?」
「わは。悪い子悪い子」
ズーズィの肩に回した腕を捻り、九蔵はズーズィの頭を雑にワシワシとなでた。
もともとニューイ以外にはほぼ自主的に触れない九蔵。
ニューイと触れ合っていない今なのに、ズーズィにこうして触れることは自分でもあまり躊躇がなかった。
ニューイ相手なら「二の腕のプニ感がバレる!」と危惧し完全回避する。
それだけニューイにはええカッコをしたくて、プニ感がバレたくない唯一無二の相手ということだ。
ズーズィと撫であいを繰り広げながら、九蔵は密かに自分の恋心の一途さをフムフムと実感する。
とはいえ、絶賛強制お触り回避フェスティバル中のニューイからすると九蔵とじゃれ合えるズーズィが羨ましすぎて、それどころじゃないだろう。
泣きながらしがみつきそうだ。
ジェラシー関連ではないのだが。
乙女コンテンツなら確実に嫉妬の炎でズーズィごと燃やされる展開なこの状況。
ニューイは共通の友人にはヤキモチを妬かないので、いつも平和である。
けれど、それもよく考えると──九蔵はちょっぴり不満な気がした。
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