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第四話 ケダモノ王子と騒動こもごも
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ワガママを言えと言った手前拒否できない九蔵は、一番頑張れそうなプレイ──コスチュームプレイをチョイスした。
理由もちゃんとある。
優しめとはいえ、いきなりSMは穏やかなニューイとのギャップが酷い。
機械音痴のニューイに大人のオモチャを使わせるのは、危険だ。もし今後使うなら、自分主導が安牌だろう。
コスプレなら自分が見るわけじゃないし、衣装を着るだけでヤることは変わらない。
そりゃあ、どんな衣装でも死ぬほど恥ずかしいことはわかっている。が、男が頑張ると決めたなら頑張るのだ。頑張るったら頑張るのだ。頑張るしかないのだ。
そんな覚悟で臨んだ九蔵だが──現在。
「九蔵、ちゃんと見ないと意味がないぞ? 視覚的に楽しむのが醍醐味なのだ」
「む、無理……っ」
夜景の見える大きな窓ごしに、セーラー服を着た自分が背後からニューイに貫かれる姿を、見せつけられていた。
震える声で抗いキツく中を締め付けると、グチ、と結合部が擦れる。
天蓋付きのダブルベッドの真ん前が窓だと、すっかり忘れていた九蔵。
夜の窓は室内の様子を鮮明に映し出し、九蔵の羞恥をくまなく煽った。
露出が控えめな、黒い長袖のセーラー服に身を包んだ自分の姿だ。
隠していても、丸みのない肩幅が男らしかった。かわいすぎない臙脂のリボンが、やけに艶めかしく感じる。襟元が守られているので、むしろ禁欲的だろう。
けれど、スカートはずいぶん挑発的な長さである。白いソックスとスカートの間の下肢が惜しげもなく晒され、生脚が丸見えだ。
引きこもりらしく白い足だが、しっかりと骨ばっている九蔵の脚。
柔らかさよりも硬さが目立つ。未処理の体毛が、ソックスで隠しきれない部分に薄らと見えていた。
そういう男の脚が黒いスカートから伸びている、アンバランスな光景。
ベッドのふちに座るニューイの上で大きく脚を左右に開き、スカートの中で身の内を貫かれているわけだ。
そんなことをすると当然ユサ、と揺すられるだけでスカートに隠された秘部が覗いてしまって、身動きするのも躊躇するに決まっているだろう。
しかも、ご丁寧に用意されていた女物の下着を着用していたりする。
ドギツイ真っ赤なショーツだ。
ほとんどレース生地のそれは、九蔵の大事な部分を守る気がない。
こんな守備力ゼロの下着を履いているなんて、世の中の女性はスゴすぎる。逞しい。九蔵はスースースケスケと、逆に攻撃されているとすら思った。
そんな姿で抱かれている己の姿を、がっつり窓に写し取られている現状。
夜空と痴態のコラボレーション。
確かに正しく星になっているが、明日には流れ星となり大気圏で燃え尽きているだろう。というか今すぐ燃え尽きて死にたい。
(選択肢ミスったぜ……コスプレが一番ヤバいんじゃねぇか、これ……っ?)
「んっ……も、恥ずかしいって……んっ……ちゃんと着たし、俺、見なくていんじゃねぇの……?」
「ふふふ、それじゃいつもと変わらないだろう? シチュエーション設定なしのコスチュームプレイなら、衣装を着ている姿をすみずみまで楽しむべきだ。……と、カントクが言っていたのである」
「監督さんなに教えてるんですか……!」
会ったことのないニューイの撮影現場監督に、九蔵は恨みをつのらせた。
見てられなくて顔を俯かせ、逃げようとする。しかし背後から犯すニューイに顎を掴まれ、失敗だ。
首を痛めないよう優しく前を向かされてしまい、そのままズブ、と首の内側に指が入って、魂の器をなでる。
「あっ……んんっ……」
ゾクゾクゾクッ……と魂を触られた時特有の快感が内側から全身へ広がり、反射的に目を開いてしまった。
窓にうつる自分と目が合い、汗ばんだ肌がドク、と紅潮してクラクラする。
泣きそうなくらい羞恥に焦がれて死にそうな顔をしているのに、下着を濡らしてスカートを持ち上げるモノ。
恥ずかしくて、いやらしい。
「****」
「っな……っ」
脳が痺れて息を呑んだ隙に、ニューイが耳元で呪文を唱えた。
九蔵は瞬きはできても、目を閉じ続けることはできなくなる。顔を逸らすことも不可能だった。首を振ったって、前方に固定されてしまう。逃げられない。
ズルい。こういう時のニューイは、本当に悪魔だ。
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