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第二話 気になるモテ期
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しおりを挟む「説明を求むス」
「ぐっ」
「なんで鮮やかな手口で氏名と連絡先と共通の趣味と次の約束をもぎ取られてるんスか。急にイケメンにモテる呪いにかかったんスか」
「あぁ、あー、あれはなんというかな」
「説明を求むス」
やはり質問攻めにされるらしい。
こうなった澄央相手に隠し事ができる気がしない。ニューイと喧嘩した時もそうだった。
情に厚い澄央のお気に入りになると、様子の変化に気づかれるやいなやつまびらかに聞き出されるのだ。
わかっているからニューイの時も初めに説明したのだが、まさか当日に本人が来るなんて思わなかった九蔵である。
客もいなければ仕事もない。
九蔵は観念し、澄央にことのあらましを全て説明することにした。
「ってことです」
「…………」
「ナスの思ってるモテ期とか、そういうんじゃないからな? そもそも世の中はゲイで構成されているわけじゃないし。だとしても俺はそういう人にモテるタイプじゃないって。桜庭に失礼だからおやめなさい」
説明をしたあと。
九蔵は安心しろと訴えてみたが、澄央はニューイについてマインした翌日と同じ表情で、ムスッと不貞腐れた。
やはり全然ダメらしい。
こうなると澄央はかなり手強い。
「ココさん」
「はい」
「確かにココさんは筋肉も贅肉もねぇス。かといって少年系かというとデカすぎる上に、顔も性格もそういう感じじゃねぇス。兄貴系じゃないスけどお兄ちゃん系ス。要するに、一目惚れドストライクされにくい、どこジャンルを狙ったのかよくわからない特筆することがあまりないタイプッス」
「……。まあ、そういうことですね」
そこまでハッキリ言わずとも。
真顔で〝ピンポイントで九蔵がドストライク! という人はレア〟と言われた九蔵は、複雑な心境になる。
そんな九蔵に、「で、も!」と逆接がねじ込まれた。
「ん?」
「俺の個人的な意見と盟友のニューイに代わって言わせていただくと……」
そう言って、澄央はスゥゥ……と静かに息を吸い──カッ! と目を開く。
「どうして俺という後輩兼同志を友に持ち、ニューイという生きる顔面国宝王子と同棲しているのに、窓際の特盛プリンスとマッハで仲良くなってるんスか」
「うあっ!」
「人見知りコミュ障陰キャ逃げ腰事なかれ主義マンのココさんはどこに行ったんスか」
「ぐはっ!」
「ハンパねぇイケメンちゃんとはいえ、ココさんへの愛を感じないスケコマシを許すほど──俺はココさんという最高に俺とテンポと趣味が合って世話を焼いてくれるイケ先輩を、他人に譲る気はねぇッス」
「わ、悪かった……っ!」
ワン、ツー、フィニッシュ。
拗ねた澄央の猛攻に、九蔵はあっけなくノックアウトされてしまった。
確かに九蔵とプライベートまで親しい相手は二人だけだが、その二人が恵まれすぎるほど恵まれた男たちだ。
ニューイに感化されて機嫌がよかったとはいえ、イケメンに自分から話しかけたのも九蔵らしからない。
最後の訴えはいつものお互いを褒め合う九蔵と澄央の友情である。それを持ち出されると九蔵は弱い。
「尊敬とかも込みってのと、自分にフィットしまくってる友達って自分と仲良くない人にばっか構われると嫌スよね」
「それはすげーわかるけど、俺ナスしか友達いねぇぞ。あとニューイの代わりにって、お前ら仲良くなりすぎだろ」
「俺とニューイは〝ココさんを愛でる会〟の盟友ス」
「その会は本人非公認ですけど?」
いつも真顔で冗談やゆるいことを言う澄央だが、どうやらその会は冗談じゃないらしい。ピースサインを見せて「ニューイにスマホがあればそういう話もできて便利ス」と言った。
それでニューイをそそのかしたようだ。
抜け目のない澄央である。
「あぁ~……とりあえずもう時間だから、社割でテイクアウト作って帰る。夜勤頑張れな」
そう言って、九蔵は拗ねモードの澄央から逃れるべく、夕飯のおかずを持ち帰るのであった。
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