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第二話 気になるモテ期

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  ◇ ◇ ◇


 あれからしばらくが経った。

 今日も今日とてニューイを残し、九蔵はアルバイトに向かう。

 最近は九蔵の付きっきりの教授により、ニューイもあまり物を散らかさなくなった。

 洗った洗濯物を廊下に散らしたりやりかけで置きっぱなしにしたアレやソレだったり、家事をする過程で出したものたちはしっかり減少している。

 まぁ、物を散らかさなくなっただけで他のことは相変わらずだ。

 未だに洗濯機はよく理解していないので破壊し、些細な家電の機械音に驚いては手に持つものを破壊し、力加減を間違えては破壊し、飛び出たしっぽや翼で破壊し。

 とにかく破壊する。

 破壊したものは泣きそうな顔で慌て尽くしたあと、べそべそしながら悪魔能力で元に戻す。

 能力で復元することは不本意らしい。
 九蔵が〝ここにいる間は悪魔能力をなるべく使わずに人間生活をすること〟と言ったからだろう。

 ニューイはなるべく能力を使わずに物を直そうとするので、結果的に悪化。

 能力を使って壊れたものを復元し、片付ける時につまずいてコケ、悪化することもあった。

 もはや呪われているとしか思えない。
 真剣にペットお留守番カメラを導入するか、悩むところである。

 閑話休題。

 呪われ悪魔のニューイに留守を任せる九蔵は、晴れた空の下を歩き、通勤途中にある書店へ立ち寄った。

 今日はいつも楽しみにしている漫画の新刊発売日なのだ。

 しかも、今回は特装版。
 限定書き下ろし小冊子付きである。

 今日だけはニューイがなにを壊しても許せるくらいの浮かれっぷりだ。表に出ないが、九蔵はご機嫌である。


(はぁ~やっと手に入るぜ……! 今日の休憩時間に読むか。家で読むとニューイが俺の背後で正座してひたすらマテするからな……一巻が終わって二巻を手に取った時なんか、あからさまにパァ、と笑顔になってすぐニュン、としょげたし……差分みたいで良き、ンンッ。普通にやりにくい)


 土曜日の朝とあってにぎわう書店内で、ニューイを思い出す。

 新刊に支配されていた九蔵脳内が、ニューイ勢力に攻撃された。

 ニューイは九蔵が乙女ゲームやソシャゲ、漫画を読むとあからさまにキューンと寂しがるのだ。

 もちろん口には出さないし邪魔もしない。九蔵がニューイと食事を共にして会話も努力しているので、悪魔様も約束をきちんと守っている。

 けれど個人で楽しむものは楽しみをシェアしてもらえないので、ハブられていると感じるらしい。
 イケメンと九蔵にしかわからない世界、というふうに捉えるそうだ。本人から聞かされた。

 嫉妬ではない。嫉妬してないというのは、それはそれで変な思考だと思う。ニューイが光属性悪魔すぎるせいかもしれない。

 なので、ドラマや映画だと嬉しがる。

 九蔵と一緒に共有したい。
 九蔵のことをなんでも知りたがり、楽しみたがるのだ。


(ま、映画のおともにコーラを飲ませてやったら「百年前よりシュワシュワしているっ」ってテレビ破壊したけどよ)


 ククク、と笑う。
 尽きないニューイのエピソードのおかげで、九蔵は一人でいる時も愉快な心地になれた。

 お目当ての新刊はネットで決済して受け取り予約をしておいたので、レジで受け取るだけで済む。

 迷うことなくレジに向かい、目的の品を受け取って、ホクホクと踵を反した。


「──本当にありませんか?」


 ふと、声が聞こえて振り返る。


「おぁっ……!?」


 そこで店員と話している銀髪の男を見つけた瞬間、九蔵はあげそうになった悲鳴を無理矢理喉奥に押し込んだ。




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