本日のディナーは勇者さんです。

木樫

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会話文 魔界的クリスマス・イブ=??

01

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◆皆さん、メリークリスマスですぞ!


「去年の謎を解明するが……クリスマス・イブは、栗スマスィ部じゃねぇのか」
「栗スマスィ部は存じ上げないな」
「栗は栗。スマスィは神の名前だろ? 栗の神を崇め隊の会合だ。栗スマスィ部」
「なるほど。アゼル、それは圧倒的な勘違いだ。クリスマス・イブだ」

 テーブルを囲むシャルとアゼル。
 シャルは手元の紙に〝クリスマス・イブ〟と書き、隣にポップなクリスマスツリーも書き添えた。

(ポップな木が気になって仕方ねぇ……なんで星のついた木を……魔王にはわかりかねるぜ、クリスマス・イブ……)

「気になる木……」
「? アゼル?」
「なんでもねぇ。去年からの謎はまだあるぜ。そう、三択ロースだ」
「アゼル、またしても勘違いだ。サンタクロースだぞ」
「なにっ」

 アゼルの書いた〝三択ロース〟の隣に、シャルは〝サンタクロース〟と書き添える。

「おい、なにもかも違うじゃねぇか! 栗スマスィ部はサンタ星人になった現代人どもの祭りで、子どもの寝室に不法侵入し、ロース、ヒレ、リブ等をプレゼントするしきたりなんじゃねぇのか?」
「よし。文字にしてくれ」
「こうだ」
「これは……な、なんてことだ……!」
「なんだよ。まだ間違ってんのか?」
「あぁ。アゼル、全て勘違いだ」
「全てかッ!」
「全てだ」

 シャルが申し訳なさそうに胸の前でバッテンを作って首を横に振ると、アゼルは驚愕し、ワナワナと震えた。

 一年越しの勘違いである。
 シャルは立ち上がり、アゼルの頭をよしよしとなでる。

「アゼル、大丈夫か?」
「……。だいじょばねぇぜ」
「ううん、困ったな……俺はどうすればいいんだ? アゼルを大丈夫にしたい」
「そのままギュッとしやがれ」
「わかった。ギュッとする」

 真顔のアゼルの言うまま、アゼルの頭をギュッと抱きしめるシャル。

「どうだ? 大丈夫か?」
「やや大丈夫だ。けどまだ足りねぇぜ」
「まだだいじょばないのか」

 シャルは抱きしめた腕にギュッギュと力を込め、更になでなでポンポンとオプションもつける。

 おかげで魔王の見えないしっぽがもげそうなくらいに振られるが、全く気づいていない。

「ククク、クックック」
「おっと」

 一生懸命抱きしめるシャルに、アゼルはヒョイとシャルを抱え、自分の膝に乗せた。

「? ご機嫌だな、アゼル。大丈夫になったのか?」
「ふふん、複雑な事情により定かじゃねぇな。主に思いがけず合法的にお触りされる事情だ」
「定かじゃないのはどうかと思うが……」
「気にすんな。いつものことだぜ」
「いつも定まっていないのもどうかと思うぞ」

 心配するシャルがアゼルの顔をのぞき込むが、アゼルはニマニマと機嫌よく笑うだけだ。

 クリスマスはアゼルが勘違いをしたが、アゼルの言い分を勘違いするシャルはかわいいとアゼルは思う。割と常にかわいいと思っている。

「そんなことより、シャル。それで今年のクリスマス・イブのディナーも、特大ケーキが並んでたってわけだな?」
「ん? ん、そうなんだ。それを見たアゼルが『今日は栗祭りか』って言っただろう? これはなにかおかしいぞ、と思ってな。聞いてみたら案の定だ」
「フン、俺は悪くねぇぜ。今回のことは魔界にクリスマス・イブがねぇのが悪い。よって魔界のクリスマス・イブは、シャルのケーキを食う日とする」
「そのクリスマス・イブは魔王城の仲間たちくらいしか堪能できないんじゃないか? 日持ち的に……いや、シュトーレンなんかを焼けば大丈夫かもしれない」
「はッ! シャルのケーキを食う日にすると有象無象がシャルのケーキ、つまりシャルを求めて押し寄せる……俺のシャルの取り分が減るじゃねぇかッ!」
「よし。せっかくアゼルが決めたクリスマス・イブだから、みんながお祝いしてくれると嬉しい。来年からはたくさん焼いておくぞ」
「馬鹿野郎! クリスマス・イブが適用されるのはこの世の中で俺だけだ! その他の存在にクリスマス・イブは訪れもしねぇぜ! 未来永劫、クリスマス・イブはただの一日として過ごすことしか許されねぇからな!」
「はっ?」
「クリスマス・イブは中止だッッ!!」

 ~こうして魔界にクリスマス文化は広がることなく抹消され、局地的に根付いた~



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