本日のディナーは勇者さんです。

木樫

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終章 本日のディナーは勇者さんです。

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「ん。だから特大ケーキを焼いたんだぞ? ケーキ入刀するんだろう」
「! 結婚ケーキかっ」
「けっこんケーキ!」

 クスクスと笑いながら特大ケーキを手に近づくと、アゼルとタローが同じように目を輝かせてこちらを見た。

 似た者親子だな。
 タローも今回はたくさん頑張ったから、ご褒美を貰っていいはずだ。

 三段重ねの特大ケーキは、いわゆるウェディングケーキを模して俺が作ったものである。
 マジパンで作ったミニマムな俺とアゼル、タローもいるぞ。自信作である。ふふん。

 ベッドのそばのテーブルにトン、と置くと、二人は揃ってベッドの上で正座した。胸を張る俺の前で、ケーキを見つめて大興奮だ。

 かわいいな。
 頑張って作った甲斐があったぞ。

「ふぉぉ~! おっきいケーキだねぇ! これが〝きょどさーぎょ〟のケーキ?」
「そうだぜ。本によれば、結婚した番が初めてする共同作業は、ケーキを真っ二つにすることらしい。真っ二つにしたケーキは、家族やトモダチに振る舞うのが粋なんだぜ」
「かぞく! 友だち! ねぇねぇおとーさん、それじゃあみんなも呼んでいい?」

 得意げなアゼルの説明を聞いたタローはにこにこと笑いながら、魔王城のみんなも呼ぼうと言った。

 もちろんだとも。

 今まで二人っきりの結婚式ばかりあげていた俺たちだが、みんなに祝ってもらうのはとても幸せに決まっている。

 俺を見上げる愛らしい瞳にこっくりと頷いて、親指を立てた。


「もちろん構わないぞ。じゃあみんなも呼びに──」

「フッフゥ~! 呼ばれなくてもジャンジャジャァン?」


 その瞬間、突然聞こえた軽い声とドガシャァンッ! という激しい破壊音。弾け飛んだのはデッキに繋がった窓だ。

 いつの間にここはハリウッドになったのだろう。スタントマンも真っ青である。これは酷い。

「来たな、破壊神。闇、深淵」

 ゲゲッ! と眉間にシワを寄せるアゼルは、慣れたように魔法を使って破片を闇の中に片付けた。

 しかし侵入者に「でも追い出さねェだろォ」と言われ、返す言葉を失っている。

 アゼルはツンデレさんだからな。追い出さないということは、別に窓の一枚や二枚、構わないのである。

「匂いに釣られて飛んできたら、楽しそうなことやってんなァ~?」

 もはやお約束である窓からの侵入者は、もちろんいつものあの男。

 俺の初めての友人でありアゼルの義弟でありタローの義叔父にあたる、ガドだった。

 ガドはブォンブォンと機嫌よく尻尾を振り、無傷でベッドに近寄ってアゼルの隣にドスンッ! とダイブする。

「ガド! 俺とシャルの間の空間に入るんじゃねぇぜッ。俺とシャルがサンドイッチのパンなら、具になっていいのはタローしかダメだッ」

 するとベッドにいたアゼルがタローを抱きながら、ガドに唸り声を上げた。

 元々空いていた空間にガドがすっぽり収まっただけだが、アゼル的にガドは遮蔽物と判定されたらしい。

「んっん~。ダメだぜ、ダーメ。俺をのけ者にするなんて、そんなのひでぇよう。いじわる兄ちゃんは仮病だってシャルにバラ」
「グルルルッ! ウォンッガゥッ!」
「クックック。もうバレてっけどな~」
「キャインッ!?」

 だけど対するガドはメンタル攻撃を仕掛けて、ごろ寝を敢行していた。

 強い。空軍長官強い。




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