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十五皿目 正論論破愛情論

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 フワフワと浮かぶガルに俺とリューオは手を取られ、雑談モードから気を引きしめた。

 ガルの能力は空間を繋げること。

 要するにワープだが、時間制限もあるし、行ったことがある場所にしか行けないし、イズナの姿では使えない。

「さて。最後の戦いだけど、あっけなく終わらせようぜ。だってさ、お前らって、すげぇよ。本当なら相手の状況がわからない中、ライバルが乗り込んできたり、娘奪いに来たりしたら、混乱の極みだ」

 ニマ、と笑うガルは、俺とリューオを交互に見つめる。

「でもなんか、あっさりトントン、ハッピーエンドに向かって進めていくんだ。お前ら、誰一人仲間を疑わねぇのな。頼ることを厭わない。頼られることを煩わしがらない。魔族と人間なのに、ハラハラもドキドキもねぇの?」
「いや、そう言われても、うーん……当たり前のことだからな……」
「つーか慣れてんだよ。こういう時こうなるよな、んでこうするだろテメェら、ってわかる。ちな、このポンコツ夫夫に至っちゃァ、アイコンタクトが会話レベルだかンな」
「ハッ! ば、バレてたのか……」
「俺が白いやつと膠着してる時になァ?」
「うぅ……っ」

 リューオにギロッと睨まれバツが悪い俺が肩をすくめると、ガルは声を上げて笑った。

「どんな時も変わらねぇってすげーよう。……今からやることって、精霊族的にめちゃくちゃ悪いことだろ? でもさ、素知らぬ顔して、このままサクッと終わらせようぜ。なんにもなけりゃ、悪人連合の大勝利で、固定概念をぶち壊せるんだからな」

 愉快げにそう言われ、俺は丸めていた背中をしゃんと伸ばす。

 素知らぬ顔で、サクッと。
 どうせハッピーエンドで、どうせかんたんに終わるなんの不安もない蜂起。

 確かにそうだ。
 俺たちは誰も裏切らず、誰も諦めず、誰も目的を間違えないから仕方がない。

 しかしこのあっけなさと〝どうせ〟を手に入れるために、俺たちは二年半の月日を費やし、間違い続けて足掻き続けたのだ。

 昔、タローが人質になった時、ガドは一人だった。

 一人では上手くいかず、俺たち家族を味方につけて立ち向かっただろう? あれもいい思い出だ。

 同じ問題を乗り越えるのはそれほど難しくない。一人で抱えるからダメだった。なら、初めからみんなで戦えばいい。

 一人ぼっちの俺と一人ぼっちだったアゼルが出会って、一人ぼっちなタローを見つけた。

 俺たちはそんな家族だから、正しさなんてクソ喰らえ。ハッピーエンドが絶対の正義。

 俺は隠密スキルをオンにし、ふふんと勝気に笑みを浮かべて一歩踏み出す。

 そんな俺に当たり前のようについて足を踏み出すリューオに、くすぐったい気持ちになる。

「枯れ木も山の賑わい、だ。一人ぼっち連合軍は、ラブアンドピースの愛情連合軍なのだよ」
「うわ、今世紀最大のドヤ顔じゃねぇか。ドヤシャルだわ、ドヤシャル」
「うむむ。そんなことを言っても、リューオだって愛情連合軍の一員なんだからな?」
「ゲッ!?」

 それでは、ゲートをくぐって行こうか。

 言葉はもういらない。
 行動するだけでいい。信じるだけでいい。呼吸で論じて、仲間を愛する。

 俺たちの紡いできたこの物語そのものが、正論論破愛情論なのだ。



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