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十五皿目 正論論破愛情論
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しおりを挟む話を聞くと、ゼオの分体であるコウモリは、通信機の役割を持つようだ。
本体を介してあちこちと通信を繋げることができるので、電話がないこの時代、とんでもなく重宝する能力である。
そんなわけでコウモリを介して、魔界の動きをふむふむと教えてもらうことになった。
電話口、じゃないコウモリ口に出たのは、お母さんことママゼンさんだ。
捕まえた右王腕を捕虜にして精霊族の動きを吐かせたらしく、こちらは慎重に準備したこともあって、万全の体制らしい。
では──いよいよ作戦も大詰め、か。
後は儀式が行われるまでに周囲を魔界軍が固め、タローを送り込むために神扉が開いた時を狙い、突撃だ。
その時、俺を排斥することでアマダたち精霊族の重鎮の信頼を得たアゼルは、一人でアマダたちの動きを抑えつけるだろう。
魔界軍は同時に総攻撃を仕掛け、精霊族の兵士たちを神扉に近寄らせないようにする。
共にやってきたことをお忘れかもしれないが、アゼルの近衛兵である黒人狼たちはこの為に内情を探っていたのだ。
黒人狼達のサポートを得て、ライゼンさんが指揮する魔界軍は、精霊族を殺さず抑える。
そしてリューオとガルが俺をサポートし、俺は隠密スキルを駆使してタローの元へ一直線。
俺がタローの元へたどり着いて鳥かごを破壊するのが、総攻撃の合図だ。
そうなれば、後は最終目的を達成するのみである。
ふふふ、おかしなことにな?
魔界と俺たちとアゼル。テーブルを囲んで作戦会議なんて、一度もしていないんだ。
アゼルは精霊族に監視されているから、マメな作戦会議なんてできっこない。
それに俺たちと通じてやっつけ三人組になってから、ガルはアゼルと会っていなかった。
同時にあちらこちらと居れば、万が一にでも通じているのがバレてしまうかもしれないからな。
けれど曖昧な説明しかなされていなくともこうしてなんとなく最終目的がわかるのは、二年半の月日を過ごしてきた仲間だからだと思う。
ライゼンさんは「魔王様がなにも言わないのには、もう慣れましたよ。霊界は監視するから、魔界はどうにかしてくれ、できるだろ? なんてワガママを言われるようになるとは、思ってもいませんでしたが」と笑った。
就任からの付き合いともなると、流石の貫禄である。強い。ライゼンさん強い。
そうしてお互いの現状把握と今後の確認を終えると、突然「キッ、キキッ」とコウモリが鳴いた。
「キキッ、ランボウ、カイセン、ユウシャ! ヨビダシ!」
「あぁんッ? なんで俺なんだよ。小難しい話は全部シャルの担当だぜッ」
「ツナグ、ツナグ。──『ねぇちょっと! 僕からの通信は三秒以内に取るのが常識じゃないのっ?』」
「!? ユッユリスゥゥゥッ! 俺が悪かったッ! なんだよなんだよおいィッ!」
作戦の把握は全て俺に丸投げしていたリューオが、瞬きする間に飛び上がってコウモリに詰め寄る。
おかげでコウモリはドン引き、俺は和やかなスマイルだ。
流石、猛獣使いユリス。ラブコール一つでリューオを喜色満面にできるとは……見習いたい。
俺も単身赴任なアゼルと通話してみたいものだ。お留守番をしているタローにかけるのも楽しいと思う。夢が広がるな。
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