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十五皿目 正論論破愛情論
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しおりを挟むそうして、騒然とした会場が一応の落ち着きを見せた頃だった。
「こ、これはどういうことだっ?」
ふよふよと空を漂いながら現れたアマダが、左王腕であるセファーと、本物のアゼルを連れて会場へ現れたのは。
反応を返すより早く、得物であるいつか見た鞭を取り出したセファーが、俺たちに向かって鞭を振り下ろす。
けれどその攻撃は素早く聖剣を振った斬撃で、リューオが弾き飛ばした。
パァンッ! と厳しい破裂音が響く。
お互いが無言で睨み合い、言葉を交わさず、俺の矛とアマダの矛は膠着した。
アマダの隣にいるアゼルは動じることなく、彼と共にふわりとレンガの広場へ降り立つ。その腕は、アマダの腕と親密に絡められている。嫌がる素振りもない。
うん。俺の胸の痛みを一つ確認したぞ。
視線をずらせばこちらを見ていたアゼルのオニキスの瞳に、バチッ、と視線がかち合った。
『おいシャル、その格好はなんだよ。なんかツヤピカしてるぜ。なんでツヤピカを俺以外に見せてんだ。他のやつらを目線で悩殺したら、俺が物理的に悩殺するだろうがッ!』
『悩殺はしていないが……垢抜けない妃より綺麗な妃のほうが強そうだろう? 言葉の重みが違うらしい』
『グルルル……! 俺はどんなお前の言葉でも全部真剣にベリィヘビーに受け止めてるんだぜッ』
『俺もだ』
実のところ、おしどり夫夫である俺たちにとってアイコンタクトはお手の物。
しかしアゼルは作戦どうこうではなく、なぜか俺の姿にいの一番に触れてきた。
目の動きから瞬きの回数、俺のスリットで視線が止まったことも、俺にとってはわかりやすすぎるメッセージだ。
こんな時まで平常運転である。流石俺の自慢の旦那さんだな。
ちなみにアゼルは真顔で、俺は暗黒微笑。いつもと逆だった。
ゴホン。いけない。シリアスシーンの演目に戻らねば。
アイコンタクトを終えて耳を触り、ピアスを鳴らすと、表情を崩さないアゼルは同じように耳を触る。
そこには代わりにガルに預けた俺のピアスが揺れていて、片耳にだけ着けたお互いのピアスは意思確認のメッセージとなった。
「シャル、どうしてここに……? 精霊城は見えない城だ。入って来れないはず。お前はまさか、不法に侵入したのか……?」
アゼルを連れてこれみよがしに腕を絡めて駆け寄るアマダは、無意識にかわざとか、悪意のある言い回しで尋ねる。
悲しげな表情であたりを見回し、俺を睨みつけた。
「儀式の道具を壊して会場を荒らすなんてッ、酷いじゃないか……っ!」
「酷い? ハッ、どっちがだろうな。アマダ、お前は自分がおかしなことを言っていると思わないのか? ン?」
「な……っ!?」
アゼルを連れて駆け寄るアマダを鼻で笑って突っぱねると、アマダは目を見開いて言葉を失う。
おそらく俺が反論するとは思わなかったのだろう。ふふん。ワガママお妃モードだと、これが正しいのだ。
挨拶をした時の俺はアマダにとって、軟弱でぼんやりとした普通の人間でしかなかったからな。
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