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十五皿目 正論論破愛情論

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 目的地へ乗り込んで場の空気を掌握すれば、後はかんたんだった。

 なるべく食事や精霊族には当たらないよう癇癪を起こし、祭事具や飾りに向けて魔法を放つ。

 食べ物を粗末にするのはもったいないからな。それに人を傷つけるのも良くない。

 逃げていく者は追わず、向かってくる者はリューオがサクサクと昏倒させる。

 魔王と戦いすぎて、リューオは魔族並みの強さを手に入れているのだ。軍で毎日訓練しているというのもある。

 タローが鳥かごの中でキャッキャと無言で応援していた。声なき声援に、リューオはドヤ顔だ。

 俺は必要な破壊工作(無機物限定)を行い終われば、不遜な態度で語る。

「同盟国の妃を郊外に放置して、まさかなんの問題も起こらないとでも思っていたのか? ハッ、おめでたい奴らだなァ。魔族も舐められたもんだ」
「むうっ!? 他種族がそうかんたんに精霊城に入れないのは決まり、しきたりなのだ! 部外者が伝統に物申すのかっ?」
「決まりだと? それじゃあ俺の旦那様は何族に見えているのやら。お笑い草じゃねぇか、あぁ?」
「うぐぐ……っ! ま、魔王様は精霊王様が許可した、正当な客人であるっ! 精霊王様の決定は唯一、精霊族の総意だ!」
「へぇ? 他種族でも精霊王様が許可すれば大丈夫、だって? ──同族の子どもを鳥かごに入れて供物にしようって鬼畜は、流石に言うことが違うらしいぜ」

 鼻で笑って顎でタローの入った鳥かごを指すと、精霊族たちは言葉に詰まり、オロオロとどよめいた。

 突然指されたタローは、慌ててわざとらしく目元を擦り、しくしくとする。
 言葉の裏を察するのが上手なタローは俺の言葉の意味を理解できるのだ。

 しかしながら今は気を抜いていたな? 上出来だ。俺の娘は天才である。

「クックック。見ろよ、リューオ? 同じ精霊族でなんの罪もない幼気な子どもが、まるで罪人のように捕らえられて泣いてるじゃねぇの」
「はい、シャル様。そのように見えますが……精霊族の方々は、どうもお気づきになられなかったようです」
「あぁ、あぁ。同族を殺す魔族を冷笑していると言うのに、とことん哀れな種族だなぁ……」
「まったくそのようで」

 頭に手を当てて冷静ぶりながら嘆くと、聖域を展開して周囲の気配を警戒しつつ隣に戻ったリューオが淡々と同意した。

 おお、クールな演技もちゃんとできている……今のリューオは、物語の騎士様のようだ。

 真剣ぶったクールな表情で剣を構えて背筋を伸ばすリューオは、ビューティーコロシアム効果もあり様になっている。これならユリスも惚れ直すこと間違いなしだ。

 ホクホクと友人たちの親愛度アップを思い嬉しくなった俺は、その笑顔を魔王仕様に昇華して、ニヤァ、と口角を上げた。

 周囲から悲鳴が上がる。なぜだ。 かっこいいだろう? 魔王スマイル。

「チッ、見る目がねぇ。……魔界じゃ真っ向から理不尽とエゴと私利私欲を掲げて、誠心誠意丁寧にタイマンでもって同族を殺すというのに。ここじゃ正論を翳して犠牲になる命の前で、パーティーをするらしい」

 反吐が出る、と吐き捨てると精霊族から、いくつか悲鳴と反抗以外の声も上がった。

 意見は多いが、そこに僅か、疑問が混じる。戸惑いや、気づきも混じる。



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