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十五皿目 正論論破愛情論
64(sideガル)
しおりを挟む枠に当てはめるのはやめろ。
そう言われても、ただ観察して人としての構成成分を考えているだけだ。
なんでもデータに取り、未来を予想して、ダメそうならやめる。占いや宗教にハマる精霊族が多いのは、そういうことだ。
精霊族が理屈っぽいのは仕方がない。
それが精霊族だから。
けれどそれだといけないと言われ、シャルもリューオもダメダメと首を横に振る。
「リューオの告白方法はなんだと思う?」
「うーん? 普通にベッドにドンな感じだろうよ、性格的に」
「ケッ。それが王子様ルックで跪き、俺と付き合ってくれませんか、なンだよなッ」
「は? 似合わねーな?」
「ほっとけッ。じゃあよ、シャルが怒ったらどうすると思うンだよ」
「またお人好しモードで許しちまうんだろーな。それっぽい」
「うっ……恥ずかしながら、剣を持って斬りかかったんだ。まぁその、罵声を浴びせながらな」
「はぁ? なんだよう、全然違うじゃねーかよう。そんなもん、わかるわけねぇぜ」
ダブル勇者に前から後ろから謎の質問をされて、それが先程導き出した傾向と違ったので、ガルはムッと不貞腐れた。
けれどそう言うと初めて、二人揃ってピンポーンと指で丸を作る。
なんでいちいちそうコミカルなんだ、この二人。真顔の男と三白眼の男がオッケー! なポーズを取っても、全然かわいくない。和まない。
「そういうことだ」
「そういうこッた」
「んや、どういうことだよ」
プク、と頬をふくらませる。
リューオはめんどくさそうにしたが、シャルは再度ガルの頭をなでてくれた。
リューオは根本的に精霊族と性格が合わないので、仕方がない。気の長いシャルに期待して、答えを待つ。
「いいじゃないか。俺たちがどういうものかわからないから、これから知る楽しさがあるんだ。ただの俺たちと、仲良くしよう。毎日おもしろおかしいぞ」
「…………ほほーん」
言いたいことがわかって、ガルは目からウロコな気持ちで瞬きをした。
そんなことか。
そんなかんたんなことだったのか。
ガルは昔、あの人間の友達に、精霊族らしい無自覚の冷たい言葉を吐いていた。
友達は怒り、笑い、時に泣く。
ガルは友達が好きだったが、彼女はガルを嫌っているだろうと思った。
ある日人間に嫌われている彼女を不憫に思い、もっと外へ出ろと言ったのが発端だ。
彼女は笑ってガルがいるから構わないと言ったが、ガルはそれを逃げだと言う。
ガル自身の価値は次期精霊王というだけで、他にはこれと言ってない。だから、彼女がガルだけでいいという理由はないはず。
そう言うと彼女は怒り、ガルも怒って外へ出て行った。
そして彼女はガルを探すために隠れ家から出て、ガルの言う通り人間に歩み寄った結果、命を終えてしまったのだ。
彼女がガルを憎んでいると思っていた。
経緯で持ってそれは確信的。
でも、彼女は最期にガルを思った言葉を言った。酷いガルを、友達だと言った。
シャルの言うことは、そういうことだ。
なにもわからない未知だから、悲しいことも嬉しいこともある。正しくおもしろおかしいんだろう。
ガルは彼らのことが、なんというか……ちゃんと、好きになった。
「うん。じゃあ、俺と友達になるか? お前たち。俺は友達は大事にするし、友達は枠に収まらないって知ってる。フリーこそ友達」
「めんどくせぇやつだなァ。でもま、いいぜ。ダチになったからには、対等だかンなッ! 観察されんのとか、キモイし痒い」
「友達になろうって友達になるのも、アリだな。大丈夫だ」
──よかった。うはは。今度はきちんと、人間の友達に、友達だと言えたぜ。
面映ゆくって、ニマニマと笑ってしまう。
ガルは魔王が仲間が揃えば無敵だと言っていたのを思い出し、確かにそうかもしれねぇぞ、としばし浮かれてしまった。
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