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十五皿目 正論論破愛情論
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しおりを挟む挨拶がわりにルーシーがショットガンをズドンと一発。
が、これはかわされた。
銃口が火を噴いたとたんに、奴の体が足下の影に落ちるかのようにして消えた。
そして付近の木陰から、ふたたび不快なにやけ面が出現。
「いきなりひどいじゃないか。ボクは同じ勇者として」
そこでまたもやズドンとルーシー。
まさかの問答無用の二連発に、カズヒコがあわてて影に潜る。
発射された弾は木の幹をズタボロにして、そのまま倒壊させた。
今度は渡り廊下の柱の影からカズヒコ出現。
と、またしてもルーシー発射。もちろんカズヒコ逃げる。大理石っぽい柱が粉砕。
以降、しばしモグラたたきゲームのような展開が続く。
影からあらわれるたびに銃撃にさらされる外道勇者。
途中で弾が切れたショットガンを、無造作に空中に投げ捨てたルーシー。
すかさず入れ替わりに新たな武器が出現、ひたすら攻撃。
その際にチラリと見えたのは小さなお人形の手。
どうやら亜空間の向こうにてルーシーの分体が武器を準備しており、その都度手渡しをしているようだ。これもいちおうは武器召喚?
「ちょ、ちょっと待て。せめて名乗りぐらい」
聞く耳もたぬとルーシー、ひたすら攻撃。
カズヒコひたすら回避。
わたし、その戦闘風景をぼんやり見学。
ルーシーはショットガンからマグナム、ライフル、マシンガンなど、次々に武器を変更。どうやらいい機会だから、色々と試してみるつもりのようだ。
でも、ガトリング砲をぶっ放し始めたあたりで、ちょっと飽きてきた。銃撃ってわりと単調だから。
「はふぅ」
わたしが大あくびをしたところで、ようやくルーシーの手が止まる。
「使い心地はまずまずですが、まだまだ威力や照準が甘いか。今後はノットガルドの魔導技術も加えての開発が必要のようですね」
存分に試射を堪能したルーシー、不満気にそんな感想を口にする。
対して射撃の生きた的にされ続けた勇者カズヒコは汗まみれにて、ぜえぜえと肩で息をしながら、こちらを睨んでいる。
彼のギフトはテイマー、そしてスキルは影魔法。
その情報は事前にリリアちゃんからもたらされていたのだが、とりあえず影魔法ってのがどんなものなのかはよくわかった。あとアレもきっちり魔力を消耗するみたいで、連発すると疲れるということも理解した。
「ねえ、ルーシー。影魔法ってのも亜空間の一種なのかな」
「似てますけど別物ですね。亜空間は完全に独立した別個の世界を創り出す能力。それに比べて影魔法はいわば紙の表と裏を行き来する能力にて、地面に穴を掘って潜っているようなもの。はっきりいって亜空間の劣化版も劣化版、完全なバチモンですね」
影魔法、ルーシー人形に酷評される。
これにこめかみをブチリとしたのはカズヒコ。
スキルとはその人が持つ素養や願望の発露。これをバカにされるということは、すなわち当人をバカにするということ。
怒らない方がどうかしている。
当然のごとく勇者はキレた。
「このボクをこけにしやがって! もう許さんぞ」
カズヒコが叫ぶなり、周囲の複数の影からのそりと姿をあらわしたのは、黒い大きなオオカミたち。
ルーシーによれば、これは草原や森に生息しているガロンというモンスター。
動きが俊敏にして性格は獰猛。モフモフな見た目に反して毛は剛毛にて体も頑強。並みの剣では刃もろくすっぽ通らない。群れで襲われたら、辺境の町なんてかなり危ないらしい。
そんなのがゾロゾロと五十頭近くも出現。
ここにきてカズヒコくんのテイマーとしての能力が、遺憾なく発揮されたようだ。
「いまさらあやまっても遅いからな。こいつらに生きながら喰われるがいい」
自分の勝ちを確信したカズヒコがいやらしい笑みを浮かべる。ここにきて真正の下種野郎が本性をあらわす。
そんな奴に向かってわたしは左右の中指をおっ立てての、ダブル・ファック・ユー。
からの、中指マシンガンの二刀流の乱れ撃ちにて、周囲を席巻。
自らモンスターを相手に戦うのは初めてだったから、ちょっと心配だったけど、弾丸は問題なくガロンたちの体にズブズブとめり込み、容赦なく内部を蹂躙して、貫通。
意気揚々と召喚した自慢のモンスターたちを、あっという間に殲滅されて、勇者カズヒコが「へっ?」という間抜けな声をあげた。
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