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十五皿目 正論論破愛情論
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しおりを挟むアゼルを──解放する?
それはつまり、別れてほしいということだろうか。
懇願するようなアマダの表情が冗談には思えず、キツく手を握り締める。
そういう話なら、俺はまたお前を泣かせるかもしれない。
「人間は弱い。だからお前が人質に取られれば、アゼリディアスはきっとなんでもいうことを聞くだろう? 魔王と添い遂げるのに、人間はマズイよ。俺はアイツが傷つくのは嫌だ」
「アマダ。それはもう、ずいぶん前にした話なんだ。俺を人質に取られて、アゼルは実際にいいなりになってしまった。結果的に解決のために俺を切り刻んで、アゼルはとても泣いていたとも」
「なっ……! そ、そんなのダメだっ。それじゃあダメだっ、わかるだろっ? どうして離れようとしないんだっ」
アマダはあっさりと過去にあった出来事を話した俺に、驚愕して前のめりになった。
この話は、リシャールに呪われた時のこと。
うん。その気持ちはよくわかる。
俺だって、当時は離れたほうがいいと強く思った。
でも、ダメなんだ。
「それを全部わかって、俺はアゼルにありのままを告げた。俺を助けるためなら喜んで自分の首を刎ねるだろうお前を……それでも手放せないと縋ったんだ」
「っなんでそんな酷いことっ!」
「アゼルはそれが嬉しいと泣いたからな」
「!」
「アゼルは俺にわがままを言われるのが嬉しいと言って、離れるなら閉じ込めたいと言った。俺はそれが嬉しくて、アゼルから離れるのは心を引き裂かれてすり潰されるような気分になる。格好つけてなんていられない」
俺が弱いせいでアゼルが身動きできなくなるから離れるなんて、そんな話はずいぶん前に不可能だと結論が出ていた。
アマダには申し訳ないが、それは乗り越えた壁。
彼が羨ましいという、アゼルたちに守られる理由である俺の〝弱さ〟は、俺が心底憎んでいるものだ。
大切な人たちに迷惑をかけて、大切な人たちが俺の代わりに傷つける理由。
アゼルを守れない。アゼルを傷つける。アゼルの枷になる。
アゼルに愛されるほど消えたくなる理由。
けれど、乗り越えた。
認めた上で、アイツが俺の弱さを喜んだからだ。
だからちっとも揺らがない俺は口元を引き締め、なんでもない表情でふんぞり返った。
するとアマダはクシャクシャに表情を歪ませ、涙目のうさぎちゃんのまま「でも!」と言う。
「アゼリディアスがいいと言っても、身を引くのが想うということだろっ? それに、それに、シャルは人間だから……っ、アゼリディアスを置いてすぐに死んでしまうっ」
「アマダ、大丈夫だ。その話ももうした。アゼルは俺を愛して不幸になるのが、アゼルにとって最高の幸せなんだと言っていたぞ」
「な……!?」
「理想は俺に愛されすぎて夜も眠れないくらいらしい」
「そんなの一般的に理想じゃないと思うぞっ!?」
頭を抱えてブワッと泣き出したアマダに、俺は慌ててハンカチを差し出したが、それは無視された。
なんだか雲行きがポンコツ夫夫になっている気がするけれど、一応これはシリアス展開である。
ただ俺が、アゼル関連の修羅場には慣れているだけだ。
だってな……自覚はないけれど、アイツはめちゃくちゃモテるんだぞ……。
それもなかなか癖の強い人にな……!
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