792 / 901
十四皿目 おいでませ精霊王
59
しおりを挟む──翌朝。
「まおちゃん~っ、おっきなわんわん来たのっ? がぶってされたのっ?」
「その話はするんじゃねぇタロー。速やかに忘れろ、昨日の記憶を全部忘れろぉぉぉ……ッ!」
身支度や朝食を済ませて、仕事着に着替え終わっている万全のアゼルがふにゃりと崩れ落ち、タローの慌てた声で小さく丸くなる。
そんなアゼルにタローが駆け寄ろうとしても、半透明な結界に阻まれ半径一メートル以内に入れない。
言わずもがな、アゼルが引きこもる時の防御結界だ。
結界を不思議そうにペシペシ叩くタローと、せっかく用意を整えたのに丸くなるアゼル。
カーキのシャツにフォーマルなベストとスラックス姿の俺は、ふむと考え込む。
もちろんシャツのボタンは上まできっちりだ。袖も留めている。
コレの原因も二人の様子も、言わずもがな昨晩のへべれけ魔王事件リターンズの結果だ。
端的に言うと──アゼルはラウンドツーをゆるへらワンワンと楽しんだ後、すぐに寝落ちをしてしまってな。
満身創痍の俺がアフターケアを頑張った。
タローの様子を見て、普通に眠っているのを確認してからほっと一息。
足腰立たないママ、ではなく男なのでパパは、大きな子犬のお世話だ。
寝たアゼルの服やアクセサリーを取り除き、隙を見せると丸まって本当の犬のように眠ろうとするのを、どうにかこうにか綺麗に洗った。
いつもの寝間着くらいなら、寝ているアゼルを転がしつつどうにか着せてあげられる。
警戒心の強いアゼルだが、俺の気配で起きたりしない。
睡眠時に俺がいるのが当たり前だからだ。
後は身体強化をかけて横抱きにし、節々の痛みにややぎこちない歩みだがベッドまで運ぶ。
約束通りタローと俺の間に挟んで寝かせると、アルコールパワーで普段は綺麗な寝顔がにへ、としたかわいいものになっていた。
確かに、俺は全身ギシギシとままならなかったし、昼間もいろいろとあったので、疲れている。
そんな時に、酔った旦那さんが帰ってきて甘えてくるのは、大変かもしれない。
だけどそう言う寝顔を見ると全部まぁいいか、と思ってしまう。
結構、俺はチョロい、かも。
お疲れ様とおやすみを言って、静かな夜はのんびりと過ぎていった。
俺としてはハッピーエンドで、もうなんの問題もない。尻も裂けなかったしな。
──が、おはようの現在。
バッドモーニングなアゼルは問題だらけの記憶に朝から思わず遠吠えをして、以降結界の中で食事や仕事の準備をしていたのである。
ちなみにタローはアゼルが昨夜の巨大狼、基本人に怯えてこうなったと思っているのだ。
自分もそうだから気持ちはわかると慰めにかかるタローだが、昨日のそれはもう忘れてあげてほしい。
お前を怖がらせてしまったのも、引きこもりの理由だからな。
31
お気に入りに追加
2,669
あなたにおすすめの小説
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
俺の義兄弟が凄いんだが
kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・
初投稿です。感想などお待ちしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる