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十四皿目 おいでませ精霊王

41(sideアゼル)

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 緩いがために明確な目的を言わないので、察しないといけない。俺の不得意ジャンル。

 シャルやタロー以外にあーんをされる謂れのない俺は、当然ながら意図的にそれを無視していた。

 そもそも茄子が嫌いだ。
 熱を通された茄子はもっと嫌いだ。

 脳内でシャル補給に忙しかった俺は、嫌いなものをウリウリと押し付けられ、目から光が消えていく。

 現実逃避とも言うが、逃げるのはカッコ悪い。戦略的撤退と言え。

「アゼリディアス~。ほらほら、あーんだぞ~」
「ふざけろ。友好関係目的の晩餐会だって言っても、親交の深め方間違ってんだよ。黙って速やかに食い終わりやがれ」
「んー。もう腹いっぱいだからなぁ……アゼリディアスに、もらってほしいなぁ」
「残飯処理に他国の王使ってんじゃねぇぞ」

 ギロリとひと睨みすると、アマダは降参とばかりに茄子を自分で食べてから両手をあげる。

 それでも顔が笑っているのがコイツらしい。全くこりちゃいない。

 出された料理を食べるだけの機械になっているルノが、かわいらしく思えるレベルだ。

 俺としては怯えられたり萎縮されたりして、こうなられるのに慣れている。

 だからこそ、逆に構い倒してくるアマダは、やっぱり謎だったりするのだ。

「冷たいなぁ、もう」

 テーブルに肘をついて俺を眺めているアマダが眉を垂らし、寂しげに息を吐いた。

 しょげるな。
 俺が悪いような気分になる。

 フォークを置いたアマダは、これ以上口にする気がないのだろう。

「お前に奥さんができたなんて聞いた時、俺はたまげたもんだぜ? 今までは告白すらされたこと、なかったのにさ」
「なんでお前がそれを知ってんだよ。ほっとけ。告白なんざされなくても俺にはアイツがいるし、アイツ以外はいらねぇ。それにな、〝好きです、付き合ってください〟なんてテンプレワードが聞きたくなっても、問題ねぇ。アイツは頼めば言ってくれる。ふふん。俺の嫁の包容力は世界を抱く」
「えぇ……急に元気になっちゃって……」

 シャルの話題を出されて突然口数が多くなった俺を見て、アマダは呆れたような笑みを浮かべた。

 当たり前だ。

 シャルは俺の元気の源で、そこにタローが加わった今の生活を思えば、短く済むわけがない。

 語り尽くせないほど素晴らしいところがあるに決まってる。今夜は寝かせないというレベルであるに決まってる。

 朝まで家族自慢生トークといこうじゃねぇか。ウキウキだぜ!

 しかし俺が口角をニヤリと上げると、アマダは早々に話題を変えてしまった。

「あぁ、今日な。そういえば魔王城で散歩をしてる時に、空軍長補佐官の、ええと……キャットの告白現場を見たぞ?」
「へぇ」

 なんだ。キャットか。

 シャルの話題じゃなければどうでもいい。
 あからさまに返事に込める感情が引いた俺を見て、アマダはあははと笑う。

 しょうがない奴だと呆れられるが、知ったこっちゃねぇからな。



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