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十四皿目 おいでませ精霊王
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しおりを挟む『嫌です、嫌です、俺は諦めませんっ! めそめそしません! ゼオ様が好きです……! ずっとずっと好きなんですっ!』
「勝手にしてもらってかまいませんが、とりあえず物理的に愛が重いので、どけてほしいんですけど」
『ああやって俺が未練なく想いを断ち切れるよう、決断を迫って追い込むところも好きです……! 自分はちゃんと断ってほしいからと、希望を持たないようにきっぱりとフるのも!』
「ああ、はい。あの発言を超ポジティブ解釈するとは……恋愛フィルター絶好調ですね」
『わざとキツく言うんじゃなく、素で気遣ってるつもりなのに冷血すぎるところッ! 断固自分がブレないところが一番好きです! 諦めないっ、い、嫌だあぁ……っ! 諦めないぞ、諦めないぃぃ……!』
「わかったから俺の上から降りてください。パッと見捕食なんで」
ゼオが自分の上で泣きながらすり寄ってくる猛獣に対して、なにやら話している。
が、人間の俺にはキャットの言葉は聞こえない。
泣き声なのかピュルルル、と鳴く声だけしか聞こえないのだ。
固唾を飲んで結末を見守る俺を横目に、ゼオが深い溜息を吐いた。
呆れているのだが……嫌な気持ちではなさそうだ。
諦めの悪いキャットに、少しは絆されているのかもしれない。
ゼオはゼオなので難攻不落だが、俺はキャットを応援したいぞ。
「つーかあんた俺に抱かれたい側のくせに、なんで俺を押し倒してるんだ。さっさと元に戻れ。デカい」
『うう~っ! そうですとも!』
そうして見守っていると、ゼオがキャットをどかせるためのアプローチを変えた。
それを受けたキャットは、先程と同じく急にパァ、と光り、瞬きする間にしゅるしゅると元通りの魔族形態に変化する。
そのキャットの表情は意を決した、告白を決意した時と同じ前を向いた表情だった。
(よかった……吹っ切れたみたいだな。キャットが泣いていると、俺も悲しくなる)
悲しみの連鎖が経ち切れてほっと一息を吐いた俺は、そんな二人を慈愛に満ちた眼差しで見守る。
──が。
深く息を吸ったキャットは、ゼオの上にのし掛りながら、陸軍の訓練場中に響き渡るほどの大声で、高らかに叫んだ。
「俺、キャレイナル・アッサディレイアはゼオ様に抱かれたい系男子です────ッッ!!」
「真・勇者様奥義、舐めんなPTAキ──────ックッッ!!」
つかの間のメンタル無敵モードなキャットの突然の大宣言に対し、同時にどこからともなくいつものあの人の必殺技が叫ばれる。
そして魔王城のツッコミを本人非公認で不本意ながら一手に引き受ける凶悪フェイスの勇者様こと──リューオのキレッキレのツッコミは、空から飛来。
「ぎゃふんッ!!」
ドゴォォンッッ!! と衝撃音が響き渡り、いわゆるスター状態だったキャットへ、多大なダメージを与えた。
ツッコミと共に放たれた燃え盛るサッカーボールが、拳を握って空へ叫んだキャットの側頭部にクリーンヒットしたのだ。
キャットは悲鳴を上げて、あえなくゼオの上からこてんと転げた。
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