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十四皿目 おいでませ精霊王

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 ありのまま答えた。

 すると本当に珍しく、ゼオは口元を緩ませて上に緩いカーブを描く。

 初めて見たと思う。
 微笑みを浮かべるゼオは。

 俺はつい、驚きに目を見開いてしまった。

 しかしながら、その笑みはどこか挑発的でわざとらしい。

 なるほど、きっとわざと俺に見せつける為に笑ったのだ。

 そういうところが強かなんだ。

「返事、くださいよ。俺はそういうズレた返事をするあんたが好きだったんですから」
「そうだな。ごめんなさいだ」
「でしょうね。ちなみに、あの日でも? 未来でも?」
「俺が俺じゃなくならない限り、いつまでも……もうそう言う生き物になったんだ。変えられない。無理に変えられたら、俺じゃなくなる。お断りに罪悪感があっても、絶対にごめんなさいしか言えない」
「くくく。そう。あんたじゃないならいらないな。霞も残らないくらいあの日ちゃんと諦めましたけど、返事を貰うと、それこそ影も残さずすっきりしますよ」

 長い時を経て気づいたのに、随分あっさりした告白で、あっさりした返事だ。

 ゼオはさっぱりとしたクールな性格だから、まるで気にしていないように、むしろ清々しそうな様子に見える。

 だが、本当はどう思っているのかはわからなかった。

 ずっと黙り込んで俺の膝にすがっているキャットを思うと、ゼオも膝にすがりたい気持ちになっているのではないか、と不安になる。

「……お断りされるのは、きついだろう?」
「ん? 全然?」

 けれどゼオは本気で、瞬きひとつも迷わずに返答した。

 振った俺のほうが心配するレベルで、迷いがない。強すぎる。

「時間ってのは大事だ。今は恋愛感情皆無って言ったでしょう。ま……一日の恋でもね、あれだけきっちり折られたら諦められます。魔王様は、気付いてらっしゃいましたよ。だから出てきたんだと思います。本当、俺は魔王様に殴られたことはなかったんですよね。基本部下に手を出さない人なので」
「俺が臨時教師になった時、ライゼンさんと戦っているのを見かけたぞ?」
「シャル関連ですしね、それ。元々は殴る程怒ったりしない、やりやすい上司でした。今は今で面白いからいいですがね。必死すぎて。俺は感情の起伏があまりないので、あれだけシャルを愛してやる自信ないですし」
「ど……どんな反応をすればいいのかわからない」
「俺はフラれたぐらいでブレないってことです。諦めたと言ったら諦めています。諦められないなら、どんな手を使っても手に入れます。恋愛で嘘は吐きません。面倒ですから」
「うぐっ」

 最後のセリフの後──ゼオの手が、ずっと動かなかったキャットの頭を鷲掴んだ。

 反応も言葉もなく、キャットは虚無の状態に入っていたのである。

 しかし予想外に後頭部を掴まれ、キャットは真っ赤な目で情けなく声を上げて、ゼオを見つめ返した。

 本当は逸らしたいだろうに、視線を逸らさないのは腹を括っていた彼らしい。




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