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十四皿目 おいでませ精霊王
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しおりを挟む俺はタローを肩に乗せてズンズンと地面を踏みしめ、大胆不敵な表情で、キャットたちに向かって特攻した。
「ゼオ……!」
「ぜおにゃ!」
「はい。なんでいるんですか」
「そうじゃないぞっ。キャットの好感度検査を受けてくれ」
「うけてくれっ」
「あ?」
俺とタローのコラボ特攻。
ゼオの目の前に仁王立ちして必死に見つめると、ゼオはいつもの無表情で、僅かに首をかしげる。
「……まった意味わかんねェこと言い始めたぞ。このクソのんびり親子がよォ……」
後ろでリューオがなにやら呆れているが、それはなかったことにした。
リューオは口が悪いだけで、怒ってはいないからな。好き嫌いの激しいボス猫なのだ。
うんうん。俺もそのあたりの言葉がわかるようになってきたぞ。
「ぐ、ぐぐ、師匠よ、俺はまだ負けていない……!!」
「おお、キャット。まだやれるのか……っ?」
「いや、師匠ってなんですか」
抗議する俺とタローの声を聞いて、キャットが待ったをかける。
地に倒れ伏していたキャットは、メンタル的な満身創痍を抱えながらも、どうにか起き上がろうとした。
ぐっと俺に向かって親指を立てている。
キャットを応援している俺も、なんだかセコンドのような気持ちだ。
燃え尽きるのはまだ早いぞ、キャット。
と言うか、始まってすらいない。
だって好意が伝わっていないのだからな。
差し出された手を握りしめ、俺はキャットを手助けし、立ち上がらせる。
感動の瞬間だ。打倒、ゼオ。
「ほーらタロー、こっちおいで~。俺と一緒にサッカーしようぜ? ボールは友達だ、友達」
「うむ? うん! がおがおと遊ぶ~!」
熱く燃える俺たちを見て、リューオはなにかを察したらしい。
そっと『あ、これはいつものアホな流れだ』と言う顔をすると、極自然なかどわかしによって、俺の肩からタローを回収し始めた。
よくわからないなりにキャットを応援していたタローも、誘拐は満更ではない。
大好きな兄的存在であるリューオにサッカーに誘われ、意気揚々と翼をはためかせた。
俺に向かって、行ってくるから下ろしてくれとアピールをする。
リューオとタローは仲がいいのだ。
ガドと同じくらい仲がいい。
ほれほれと誘うリューオが、俺の肩からタローを抱き上げる。
子どもを託した俺は、彼の腕の中のタローにぴこん、と人差し指を立てた。
「タロー。がおがおの言うことを聞いて、危ないことは一人でしないようにな」
「いつもの、だね! りょうかいしたんだよっ。しゃる、ぎゅーして~っ」
「ぎゅー」
「ぎゅー!」
「ふへへ~いってきます!」
「はい。いってらっしゃい」
いい子のお返事をするタローに、俺は強請られるままぎゅっとハグを贈る。
行ってらっしゃいのハグだ。
アゼルに毎日しているので、タローも知っているのである。
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