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十四皿目 おいでませ精霊王
24(sideゼオ)
しおりを挟む「捜し物。なにを探してるんですか?」
「卵だよ~。白い卵を探してんの」
「あぁ、それなら厨房にありましたよ」
「え! まじでかぁ~!」
サラリと告げられたゼオの言葉に、精霊たちがどよめいた。
みんな我先にと厨房の場所を聞き、そしてまたふよふよと風に乗って去っていく。
自由な彼らは突然やってきて、突然去っていった。
なんてはた迷惑な奴らなのだ。
消え去ればいいのに。
ゼオは胸中で数回全員を氷精霊にしてから、素知らぬ顔で彼らを見送った。
「オイ吸血野郎、それってまさか……」
察しのいい勇者が胡乱気な視線をよこすので、ゼオは静かに視線を返す。
厨房に置いてある白い卵。
それが魔界のノーマルな鶏卵だということには、気付かなくていいと言うのに。
「察しのいいガキは嫌いですよ」
「某錬金漫画のトラウマシーンのセリフを止めろッてんだこのド鬼畜冷血漢がッ! それに俺はガキじゃねェわッ!」
貧血祭りで死屍累々の部下と違って元気百倍な勇者が、余計なことに気付いて噛み付く。
めんどさくてチッと舌打ちをした。
もっとうるさくなった。めんどくさい。
もちろんゼオは現代の錬金漫画なんて知らないし、キメラ製造の趣味もないので、これはたまたまである。
ただ炎タイプなゴーイングマイウェイ族の勇者と、氷タイプなマイルール至上主義のゼオでは、相性最悪もいいとこなのだ。
──そうして言い合う二人に、近寄ってくる影が一つ。
「魔族的にはあんた程度、クソガキ同然ですよね。居候から雇ってもらった臨時軍魔の分際で、人の言うこと聞きやがりませんし」
「おいッ! ゼオルグッド・トードォッ!」
「ン?」
「あ?」
突然、聞き覚えのある声がフルネームでゼオを呼んだ。
その声に反応したゼオと勇者は、声のしたほうへ視線を向ける。
聞き覚えのあるこの声は、同じ役職故に日常的によく聞く、あの男の声だ。
背中から生える伸縮自在な黄金色の翼に、薄い毛皮を纏った獣の手足。
尻からぴょんと伸びた獅子の尻尾。
非番だったのかラフなVネックのセーターと絞ったパンツで現れた彼は、案の定。
空軍長補佐官──キャレイナル・アッサディレイアではなかろうか。
なぜここに? という疑問を抱き、言葉にするより早く、キャットがゼオに向かって駆けてくる。
いつにも増して強烈な冷ややか目線で、吹雪を背負いながら、だ。
そしてゼオの首に両腕を伸ばしてガバッ! と飛びかかりつつ、大声で一言。
「貴様如き斯様な生き物にこの俺と共に生涯添い遂げる最上級の栄誉を授けてやろうッ! ありがたく土下座して受け取るがいいーーッ!」
(意訳:好きです付き合ってください)
「や、あんたに飛びかかられたら俺死にますよね」ヒョイ。
「あふんッ!」
当然のことながら──ゼオにはその意訳が少しも伝わっていない。
熱烈告白ハグはあっさり避けられ、キャットは頭から地に沈むハメになった。
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