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十四皿目 おいでませ精霊王

21(sideゼオ)

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 ほんのちょっと目を離した隙に、自分の部下がまたもや遊び始めている。

 それだけに飽き足らず、面倒な来客に絡んでもいると言う、目の前の事実。

「はー……サッカーがいつから訓練になったんだ? バカ共が……」

 まったく。
 騒動の収束が面倒だから、全員氷漬けにしてやりたい。

 いざこざを取り締まる側の軍が、なぜいざこざを起こしているんだ。単細胞すぎる。

 不幸中の幸いとして、それをまとめるべき陸軍長官は本日は通常出勤だ。

 なのでまだ基地に帰ってきていないのは救いだろう。
 アレがいると更にややこしい。

 まとめなくていいから掻き回さないでほしいと言う、切実な願いが込められている。

 まぁ長官がいないなら、あの馬鹿げた喧嘩を取り締まるのは副官のゼオの役目だが。

(……見てるだけでめんどくさい)

 あぁ、部下が軒並み中指立てて、クソガキみたいな煽り文句を言い始めている。

 それを受ける護衛部隊側も、わざとなのか本気なのか、間延びした口調で煽っている。

 殴り合い寸前だ。
 ゼオのため息は深まるばかり。

「心底ダルいな。いっそ魔王様が丸ごと焼いてくれればいいのに……めんド、クサ、イ」

 悪態を吐きながら、ゼオの身体が指先から順にバタバタバタッ、とコウモリの姿に変わっていく。

 それは、ゼオの形態変化の一種だ。

 ゼオはハーフヴァンパイアであるからこそ、昼も夜も関係なく活動的なコウモリたちに、変化することができた。

 数もサイズも自由自在。
 本体はあるが、一匹一匹が本物のゼオ。

 ゼオは個々に別の動きをさせることができるくらい、分体の操作がうまい。

 それ故に連絡係として、そしてそれを兼ねた部隊の管制塔として、副官に上り詰めた。

『ヤワラカイトコ、カム、ヨ?』
『クビスジ、イチゲキ。ネ』
『ウチノバカ、ゼンイン』
『ゼンイン? コロシテモ、イイ?』
『ダメ。メンドウ』
『オシオキ?』
『ソウ。デモ、タベテイイ』
『イイ』
『イイ。ワリニアワナイカラ、ネ』
『キキキ。イク』
『イク』

 目的を共有して、一斉にパタパタと飛んでいくコウモリたち。

 自分を幾匹にも分けて考えることで、脳がこんがらがることもないのだ。

 アホな部下たちの血を吸ってやろうと、優秀な全匹が空へ舞い上がった。

 お仕置き部隊と化したコウモリ軍団は、部下を眺める。

 燃え盛るサッカーボールでサッカーをして遊ぶのに邪魔な精霊たちを、追い返そうとしているのだ。

 サッカーは訓練じゃない。
 つまり、サボりである。

 なら、お仕置だ。

『カクホ、カクホ』
『ウッカリコロスノハ?』
『ダカラダメ、ダヨ。マオウサマ、コマル。イケナイ』
『ウン。シャル、コロスキライ。ネ』
『ソレハシカタナイ。ネ。カクホ』
『カクホ、カクホ』

 ゼオたちは気配を消しつつ、空の上から素早く自分の部下に狙いを定める。

 そして一人一人の頭の真上と言う死角から、その首筋目掛けてブワッ! と一斉に突撃を仕掛けた。



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