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十四皿目 おいでませ精霊王
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しおりを挟む泣きそうなのを隠すため、キャットはいつも以上に睨みつけつつ、好意の対象を吐けと絡んだ。
詰め寄られたゼオは、面倒くさそうに「どうでもいい」と答えて去る。
家に帰って一人反省会をしたそうだ。
けれど大事なのは、そのセリフ。
ゼオは不満げなキャットに、仕方なく言葉を続けてくれた。
曰く「敢えて男に行こうとは思わないが、好みのタイプであればどちらでも構わない」だそうだ。
キャットは思った。
「どっちでもいいなら、頑張って告白すればワンチャンあるくない?」と。
キャットは思った。
「ワンチャンあるなら、好みのタイプに近づけてから告白すればつまりパーペキじゃない?」と。
キャットは思った。
「パーペキ決めたら実質両想いじゃん。そんじゃあ、両想いの人にご指導ご鞭撻よろしくお願いするしかなくない? 行くべや」と。
そして行かれた先が、俺の部屋。
目的は両想いどころか結婚していて、狙ってるのかと言う程押し寄せるあらゆる困難を乗り越えた、カップルの片割れ。
すなわち──俺だったというわけだ。……完全に人選ミスだ。
「ゼオ様にガチ恋中なんて、シャル様以外誰にも言ってませんし……お、俺はこんな性格でしょう? 海軍長官様や宰相様以外の魔王城の幹部様たちには、絶対緊張モードになってしまって……! 部下には相談できねえし、うう、うう……っ!」
「な、泣かなくてもいいんだ。んんと、ほら、フロランタンを食べてお茶を飲むといい。喉に詰まらないように、そっとな」
「ふぐっ、むぐむぐ、ごくん。なにこれすげぇうまいですぅぅぅ……ッ!」
「ああっ、泣くな泣くなっ、お世辞はいいんだっ」
「美味しすぎて泣いたぁぁぁぁ……!」
フロランタンを頬袋パンパンに詰め込みダパーと涙するキャットに、慌てて紅茶を注いでやってゆっくり飲むように言う。
うう、泣く程口に合わなかったか。
今日は甘さ多めなんだが、失敗したかもしれない。今度は甘さ控えめにしよう。
ゴホン。
キャットが心を落ち着かせている間に、俺の都合を詳しく説明しよう。
どうして俺が人選ミスなのかというと、俺は頗る恋愛ベタだからである。
ユリスと話をしていると、毎度思うんだけどな。これはわかるだろう?
何度も言うが、初めての彼女に振られている俺。
そして駆け引きができない。
つまり好きな人を否定することができない。
全てどんと来い、受け入れたい。尽くしたい。かわいがりたいし、愛したい。思った時に言葉にしたい。
リューオ曰く真面目馬鹿な俺だから、言われたことを愚直にそのまま受け取ってしまう。
その裏側の本当の意味を察してあげることが、苦手だ。
気が利かなくて面白みがないと言われる所以である。
冗談や戯れるのも好きなんだが……うん、あまり伝わらない。
アゼルくらいなにもかも受け入れてくれるか、リューオくらいなにもかも自分ルールでツッコんでくれる人じゃないと、冗談もままならない残念な男だ。
キャットは俺の告白を知らないだろう?
俺の告白は頭がぶっ飛んでいる時に我慢ならなくて、好きすぎて言ってしまったドジな告白だった。
なに一つ計画通りにいかなかった。
結果オーライだが、完全に失敗例だと思う。
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