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十四皿目 おいでませ精霊王
12(sideアゼル)
しおりを挟む「もう、魔王様は触っただけで減るもんじゃないでしょう? さっき剣を振り回したのも、一般的にはかなりギリです。人間国や天界なら一発アウト」
「ハッ、レッドカード上等だぜ! 本当なら今夜も俺は、シャルとタローとディナーだったんだ。相当譲ってやってる。もうディナーまで俺は執務室から出ねぇからな。精神力回復に務める」
「くっ、そんなテコでも譲らない真剣な表情で引きこもり宣言されましても……!」
うるせえぜ。
これは決定事項なんだよ。
俺はメンタル豆腐。
本当はこれっぽっちも王様向きじゃねぇんだ。ストレスマッハに決まってんだろ。
まあ休憩も兼ねて好きにしてください、とライゼンはなんやかんやと許可する。
自分もティータイムが強制だとは、知らないのだ。逃がさねぇ。
お前も一緒に、終わってから心の栄養にしようと取っておいたシャルのお菓子を食うんだぜ。ふふん。
シャル。俺の嫁。
アイツは朝食の時はなにも言わなかったのに、しれっとクルミのフロランタンを作りやがった。最高かよ。
しかもザラ紙のちいさいメモが、二枚入っていた。愛されすぎて死ぬかと思った。
俺の尊さ残機がいくらか減った。
『お疲れ様 今日は少し、甘めだ』
『まおちゃん! あまいよ!』
一枚目はいつものアイツの字で。
もう一枚は、解読不可能に近い難解なタローの字で。
タローは言葉は聞いていたからすぐに覚えたが、書いたことのない文字と言う概念に慣れなかった。
今でもまだ文字がまともに書けなくて、はなまるを貰ったことがない。
それでもそれを書いたのだから、俺は二枚揃いで宝物庫へシューティング。
そんな配達された瞬間の記憶を思い出し、じっくりと尊さを噛み締めながら執務室へ歩く、ご機嫌麗しい夕暮れ前のひとときであった。
「はぁぁぁぁ……ッ! どうしてあんなにかわいいんだ? 溺れるほど愛されるってのはこういうことだろうよ、なあライゼン。好きすぎると息ができねぇ……なんかもう、俺が足りなくねぇか? 俺一人じゃこのかわいいを受け止められねぇぞ。詳細は省くが俺は死ぬ」
「そのセリフを全て本気で言われる状況に慣れている自分が怖いのですが」
「存在してるだけで尊みが凄い。俺に笑いかける顔の眩しさが完全に浄化聖法のそれ」
「いやそれ魔王様ダメージ受けちゃう攻撃ですよね? シャルさんにそのような特殊能力はございませんよ」
「馬鹿野郎! シャルの笑顔には俺を必殺する能力があるに決まってんだろッ! もちろん進んで殺されてぇ。是非殺されてぇ。毎日がオーバーキル。はぁ……殺されるたびに恋してる俺……」
「いつまでたってもボソボソ悶えてらっしゃる魔王様には、一度本人たちにはっきり言っていただきたいと常々思っている私の心プライスレス」
「今日も俺の嫁と娘がかわいいから俺生きてる……」
「うん、通常運転ですね。我が王」
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