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十四皿目 おいでませ精霊王
10(sideアゼル)
しおりを挟む「まあ、アゼリディアスはツンデレだもんなぁ……大好きな妃は諦めるから、そう威嚇しないでくれよ。悲しいだろ」
ついさっきまで静かだった俺が話を聞いて全力で拒否するものだから、アマダは構ってほしそうにしょんぼりと笑う。
俺としては、当たり前の対応だった。
今まで俺にそこまで興味なかったくせに、シャルたちを気にするのはどういうことだ。
横恋慕しようって言うなら、俺を倒してから逝きやがれ。
「まーほらほら。今夜の部屋に案内してくれたら、ディナーまでおとなしくしてるからさっ。七並べでもやろうぜ。見張りも兼ねていいからさ」
「誰がツンデレだ、ちくしょうが。いいか? 俺の嫁の素晴らしさをディナーまでしっかり語ってやるから、精霊共にも広めておけ! 俺のモノに手を出したら、国云々より個人的に滅ぼしにかかるかんな。カワイイを煮詰めて固めたアイツは俺のモノだ!」
「え? あ、あれ? ……アゼリディアスってこんなキャラだったっけ、ライゼン」
「ええ。これでも最近欲求の我慢と、暴走をお妃様にバレないよう表に出さないことを覚えましたので、落ち着いているほうですよ」
「あはは、落ち着いてるなんてまさかだろ~」
悟りを開いているライゼンがイイ笑顔で返した言葉を、アマダは笑って流す。
フンッ、そのまさかに決まってんだろうが。
俺はシャルの前で素知らぬ顔をするってことを覚えたんだ。
一時は冷めたと思われたぐらい、完璧に隠してるぜ!
俺がシャルが好きすぎて仕事以外の思考回路はほぼシャルに持っていかれてることなんて、きっと誰も気づいてねぇ。完璧すぎる。
無言でドヤ顔をしつつ、壁際でパタパタと飛びながら待機していたマルオを呼び寄せる。
マルオには今夜泊まる部屋まで、アマダたちの案内をさせることにした。
シャル自慢はしたいが七並べはしたくないので、語るのは夕食時にしてやろう。
太陽のような笑顔でブンブンと手を振って去っていくアマダと、それを真似てチマチマ手を振ったが後ろ向きに歩くから派手に転んだルノを見送る。
そしてズゥンと閉まった巨大な扉に、こっそり中指を立てた。
「あ。そういえば、ジズの捜索について協力要請するの忘れてしまったよ。どうしようか?」
「んんと、えっと、まだあの日まで日がありますし、ばんごはんの時に言ってみましょうっ」
「うんうん、そうだな~」
閉まった扉の向こうで繰り広げられていたそんな会話は、当たり前に俺の耳には入っていなかった。
壁際に控えていた近衛に解散を命じ、一時的な開放感に息を吐く。
アイツは個人的に嫌じゃないが、俺の宝物を拝めるかというと別問題。
会ったこともなかったのに初対面で好感度が地底を突破していた天王とは違い、アマダは元々王じゃなかった。
なのでいい意味でも悪い意味でも、王様らしくないのだ。
政治に関しては政治のトップ、左王腕がいて、軍事に関しては軍事のトップ、右王腕がいる。
なのでアマダはそいつらを纏めて決定を下すだけだが、それも全て任せているそうだ。
王という役職にすらそうして縛られない自由過ぎるアマダは、俺を謀ったりしないだろう。
俺はそういう嗅覚は利くんだ。
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