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十四皿目 おいでませ精霊王

09(sideアゼル)

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 それほど強いのが魔王。

 だが謙遜なしの本気で、俺はシャルとタローが人質になったら手も足も出ない。情けない男だ。

 大事な者ができると人は弱くなるのだと、いつか読んだ本で誰かが言っていた。

 けれどおかげで頑張ることもできるとも言っていた。同意過ぎる。

 あれそれと渡された書類に関して口頭で会議をしつつ、むこうが終わればこっちの報告も。

 そうして数時間。

 アマダは空中に浮かんでいるので、ルノにだけ指パッチンで椅子を出してやった。

 召喚魔法は指パッチンだ。

 発動になんらかの挙動と言う術式が組み込まれていても、大抵の魔族が指パッチンなのは、かっこよさを重視しているのだと思うぜ。

 俺が覚えた時は周りの真似をして、そう覚えただけだったりする。

 しかし今でもそうするのは、アイツにカッコイイと思われたいからだ。

 些細であろうともなんでもする。
 それが俺。

 ……昨日の夜。
 シャルが精霊王を気にしたのは危なかった。

 いやいや危なくねぇけど、危なくねぇけど万が一を俺は許さねぇかんな。

 だってアマダは本当は俺より素直で俺より人懐こくて、俺より一般的に見てイイ奴で、俺より話もうまいし好き嫌いもねぇ。

 茄子も食える。
 カッコイイ王様で言うと惨敗だ。

 シャルは俺の顔が好きなわけじゃない。

 そもそも子どもが好きで女が好きだから、もしかしたらルノに出会ったらそっちに興味を持つかも知んねぇぞ。

(……そんなの絶対ダメだッ!)

 シャルが際限なく好きだと、いつまでたってもこうで仕方がない俺だ。

 ちっともアイツ自身を疑わなくても、何度お前だけだと言われても、人の心はパカッと開けないから俺は生涯ハラハラするんだぜ。

 だからこうして城に囲って隠してるんだからな。万が一でも離れたくないから。

「なあなあアゼリディアス。いい加減お前のお嫁さんに会わせてくれよ」
「寝言は墓場で言え」
「しかも風の噂によると、娘がいるらしいなー。流石魔王、手が早い」
「まとわりつくな。消え去れ、水たまり野郎が」
「うわっ、そんな怒るなよ~。挨拶しようと思っただけだぞ? もう……」

 仕事だから渋々真面目にしているだけの会議に飽いている俺の内心を、見透かしたかのような言葉だ。

 会議が終了して開口一番そんなことを言い出したアマダを、つい剣で振り払う。セクハラすんなッ!

 剣擊を受けて逃げたアマダをあわあわと見ているルノと、シャル関連スイッチ入るのが早い俺に頭が痛そうなライゼンを横目に、断固拒否をした。

 男には譲れない戦いがあるんだ。
 主にシャルとタローに関連することは、譲るわけがない。



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