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十四皿目 おいでませ精霊王
02
しおりを挟むそうしてしばらくタローを起こさない様に小声で戯れると、すっかり憂鬱な気が晴れたらしい。
アゼルは意気揚々と何度か俺にキスをして、満足げにニマニマと笑った。
よかった。アゼルが元気になると、俺も元気になる。心臓を同じくするような関係だから、一安心だ。
「ん……それで、精霊王と言うのはどう言う人なんだ?」
最優先事項であるアゼルを元気にする仕事が終わったので、話を元に戻して精霊王について質問してみた。
するとアゼルはむっとして、少し考える。
「あぁ? ……俺より弱いし、俺より軽薄で、俺より意味がわからねぇ。俺よりにこやかだけど俺より小さいし、俺より爽やかだけど俺より甘ったるい。ちっとも格好良くねぇぜ」
「ええと、どうして全部アゼル基準なのかがわからないが……底知れないが愛想がよくて爽やかなハニーフェイスの王様、ということなんだな」
「格好良くねぇ王様だ!」
そして考えた結果、アゼル基準で精霊王の情報が与えられた。
んん? もしかして、同じ王様だから比べられると思ったのか?
大丈夫だ。
俺はお前が一番カッコイイ王様だと思う。
そう言うと黙り込んだアゼルにギュウッ、とキツく抱きしめられてしまい、間一髪。
危うく内臓が出るところだったという話は、取り敢えず置いておこう。
王様カッコ良さランキングの心配がなくなったアゼルが、改めて語ってくれた話はこうだ。
精霊王は五年前に即位しただけの新任の王で、即位する前から知り合いであり、一応人畜無害な男らしい。
元々は精霊王の後継者候補だった兄が大きな怪我を負い、なし崩し的に王になったゆるい王様だとか。
やって来るのはその精霊王と、近衛騎士団、そして彼の側近である司祭。
それはそうか。
流石に王様が一人で他国に行くなんて、危なっかしくていけないもんな。
信仰が厚くスピリチュアルな国家運営を行っている霊界では、宰相に当たる人物が司祭なのだ。
天族が自分たちを神の使徒として神とほぼ同列に見ているのと違い、精霊族は神の下僕と言う思考をしている。
無宗教のある意味俺が神様だ状態なのが、魔族だったり。
海の向こうからこの魔界の近くにまで連なる、長い山脈。
彼らはその山脈を霊界として、城を構えているとか。
ただその城は見えないので、他種族は近づけない。
幾つもある山の中で、比較的近くの山に精霊王の見えない城があるのだ。
明日はそこから魔王城を目指してやって来るのだが、それなりに距離がある為、到着は午後となるらしい。
明日の午後から精霊王と司祭を連れて、これまでと今後の話をする。
そして敵対意思や不穏な動きがないかを裏で探られ、夕飯を接待するのがアゼルの仕事。
後は一晩泊めて翌朝見送り、終了だ。
それだけ聞けば、特に問題のないプランだと思うが……アゼルは歓迎したくないみたいだな。
会合といえば、天族の王子とは仲が悪い上になにか個人的な出来事があったと思う。
それを思うと、精霊王ともなにかあったのかもしれない。
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