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閑話 ガドと愉快な仲間たち
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しおりを挟む意図せずやらかしたガドは、その他の数々の珍事もサッパリ忘却。
ポテンシャルを最大限発揮し、メキメキと頭角を現して、ついに最年少空軍長官となった。
となれば中身は自由人だが、外側はそれはもう女性受けのするスペシャルな男になる。
そのあたりはアゼルと同じだ。
魔力補正見た目が良くて権力があり、魔族的にも強い男。モテないわけがない。
ガドは彫りの深いワイルドな面差しと長身の体躯に、黒い軍服。
つまり長官の色。
そして長官イコール金持ち。
世のセクシャリティが女性な男たちは、話術や戦闘力や見た目を磨き、苛烈な戦場で戦っている。
しかしガドやアゼルは中身がスーパーフリーダムとツンデレパパだろうが、その戦場では立っているだけで勝ってしまう。
散々やらかされたのに、女性にもフラれたりしていれば、そりゃあヤケにもなる。
憎しみを滾らせ、カマしてやろうぜ、と一念発起するのだろうな。
んん……俺にはよくわからない。
よくわかっていない顔をしていると、バカデビは「告白した女が三人連続シルヴァリウス推しだった俺の身になれよッ!」と泣きっ面で吠えた。
なるほど。
実際フラれていたのか。
俺の身になれと言われ、バカデビを俺、女性をアゼルに置き換えて想像してみる。
すると非常に気持ちがわかったので、動機足り得ると納得した。
だってアゼルに三人連続フラレるんだろう? そんな悲しいことはないぞ。
三人のアゼルの誰にも俺を好きになってもらえず、皆ガドがタイプだと言う……。
よし、竜の尾と角を手に入れねば。
一念発起して、俺は竜人になる。
ガドは昔の暴挙に対しては反省して、ごめんと謝っていたが、それに関してはさっぱりわからないようだ。
むむむ。ガド、アゼルに置き換えてくれ。とても悲しいぞ。
心の中で念を飛ばした。
──ちなみにそんな俺の立ち位置、傍聴人である。
傍聴人なのに皆が皆俺に「なァ?」やら「だろッ!?」やら「ですよね」やら、話を振ってくるので、一連の流れを馬鹿真面目に考察したのだ。
空軍長官に卑怯な決闘を挑み、魔王に喧嘩を売った事件と聞いて、他の傍聴人もたくさんいたのだがな。
なぜだろう。
いつの間にか、俺の周りにも無人サークルが形成されるようになった。
アゼルより直径が小さいし、サークルの外から敵意のない視線も感じるけれど、少し困る。
そして近頃魔王城の魔族が俺を〝魔王召喚スイッチ〟扱いしていると知ったのは、つい最近のことなのだ。
勘弁してほしい。
アゼルは俺を押さなくても、アゼル、と呼べば来るだろう?
ということで、長くなったがそんな話。
傍聴人の俺が、ガドとリンドブルムたちの仲立ちを行い、半ばライゼンさんたちサイドの人として裁判が進められ、リンドブルムたちは輜重隊になったのだ。
執行猶予期間なので、彼らはお給料がない。
雀の涙程もない。
そこに慈悲はなかった。魔界だからな。
住むところは、空軍寮があるので大丈夫だ。
豪華なメニューでなければ基本の食事は無料だし、たくさん食べる竜だから足りないだろうが、自分で狩りに出ればいい。
リンドブルムたちは四苦八苦しながら日々馬車馬、いや馬車竜の如く働いている。
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