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閑話 ガドと愉快な仲間たち

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 ──半刻後。

「まだだ、我慢な」
「…………」

 じっと黙り込むアゼルを、静かに窘める。

 作戦を立てた後の現在は、空の上だ。

 隠密モードの俺と、顔が隠れるローブを被って気配を消したアゼルは、ガドの背に乗ってフォレクスリールに向かっているところである。

 だがしかし、アゼルはご覧のとおり不機嫌丸出しだった。

「ガドがタローは無傷で、大人しくしていると言っていただろう? 人質と言うのはある意味で、目的達成までは安全なんだ。そっと作戦行動に移ろう。慎重に行くってさっき決めたからな」
「…………。フンッ、別に俺は怒ってねぇぜ。超絶クールだ。お前は心配性なんだよ」

 風や衝撃から胡座の中に抱き抱えて俺の身を守るアゼルの目は、しっかり据わっている。

 ふーむ。どの口で怒っていないと言っているのだろう。

 俺の前で魔王感を出している時点で、お察しである。

「そもそも俺はタローを溺愛して、甘やかしたりしてねぇかんな? 多少さらわれたところで、全然キレたりしねぇ。俺もお前も親バカじゃない筈だろうが」
「いや。俺は親バカではないが、お前は親バカだと思うけどな……。取り敢えず、そのわかりやすい目をやめような。傷があったらどうしてくれようって目をしているぞ」
「………し、してねぇ。目つきが悪いのは生まれつきだ馬鹿野郎」

 目つきのガチ感を指摘するとプイッとそっぽを向いたが、表情が真顔なので相当キテいるのがやはり丸わかりだ。

 このように、心配より先に殺意が湧くタイプのアゼルを押さえ込むのも、俺の仕事だったりする。

(まったく……過保護じゃないって言うが……説得力皆無なんだけどな)

 むむ、と難しい顔をする俺は、知っているのだ。

 城を出る前にアゼルが、フォレクスリールに駐屯する陸軍の駐屯舎へ疾駆けの手紙を飛ばしていたことを。

 ガドから聞いた現場まで、呼べばすぐ来るよう指示を出していたじゃないか。

 囲ませたりすればガドが話したのがバレて、タローの身が危ないからな。

 事後処理班を兼ねているんだろう。

 バレバレのバレバレである。
 タダで済ませる気なんてはなっからない。

(それからええと、なんだ。まだあったぞ)

 ガドの解任書と任命書しか書いていなかったにしては、ガドの逃げ場を特定してやって来るのが遅いと思ったんだ。

 なのでどうしたのかと聞くと、もう刑場や牢の準備と、関連書類の準備を終わらせてきたと答えられた。

 もう絶対に捕まえる気満々じゃないか。
 俺はアゼルの殺気を感じつつ、うんうんと頷く。

 事情も知らなかったのにガドに辞表を書かせた犯人がいるとあたりをつけるなんて、即断即決も良いところだ。

 普段はよく暴走しているのに、真面目にやると仕事が早い。

(……というか、その……本当に俺が関わってないと冷静だな……)

 ちょっと罪悪感がある。

 俺と言うもの自体が残念スイッチだったなんてにわかに信じ難いが、なるほど。
 真実だったのか。



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