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閑話 ガドと愉快な仲間たち
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しおりを挟むツン側の感情を顔に出すのは全く躊躇しないので、不機嫌丸出しだ。
差し出された書類には解任を印したものと、任命を印したものがあった。
おそらく魔王城の役職任命を全て自分の裁量で決められるアゼルは、厄介事が終われば即ガドを任命する気なのだろう。
うちの魔王様は、いい男だからな。
周囲の人たちいわく、俺が関わらなければ冷静で容赦のないクールな魔王らしい。
んん、どんなアゼルもかわいく見える。
俺はアゼルと目が合って、すぐにコクリと頷いた。
大丈夫だ、事情は聞いている。
呪いとかの類ではないから安心してくれ。
「グルルッ魔王ォ~!」
「デカいのがチビん時とおんなじ感覚で纏わりついてくんなッ!」
俺の返答に頷き返したアゼルがスタスタと近づいてくると同時に、竜人型ロケットがガバッと発射だ。
隣でおとなしく座っていたガドが感極まったのか、ロケットダッシュでアゼルに飛びかかった。
アゼルはアゼルなのでよろめかないが、しがみつくガドにウォンッ! と吠える。
引き剥がそうとはしないので、心底嫌なわけじゃないみたいだ。
仲良しだな。
不謹慎にも和んでしまう。
アゼルより随分大きいガドは爬虫類らしくしなやかで縦に長い為、傍から見てると絞め技なのが惜しい。
魔王~魔王~っと子どもの頃のようにしがみつくガドをひっつけたまま、アゼルはスタスタ歩いてくる。
そして当然のように俺の横に座り、ガドを自分のもう片隣にペイッ! となげた。
「あっ、駄目だ。アゼル、ガドは病み上がりだ。回復魔法をかけてもらったとはいえ、乱暴はしてはいけない」
「ふんっ、大丈夫だっ。魔族は人間と違って、多少もげてもすぐくっつくんだぜ! お前はコイツに甘すぎるっ」
「くっつくのか。いや、それより、ガドに特別甘いことはないぞ? 俺が一番甘やかしているのは、アゼルだ」
「!? あ、あぅぅ……!」
嫉妬の虫がウズウズしているアゼルに思ったまま答えを返せば、アゼルは赤くなりつつへの字口でそっぽを向く。
むむ。まだ〝ちゃんとお前が一番好きだぞ〟まで言ってないのに、どのあたりに照れる要素があったんだ?
「クックック、アッハハッ! またワンパンかよォ~! いつもいつでもお前らは愉快だなァ」
ガドはガドで投げられてベッドに転がったのに、アハハ! と楽しそうに笑っていた。
泣いていたのが嘘みたいに元気溌剌。
やる気十分だ。俺はキョトンだが。
(んん……スイッチがよくわからないところも似ているな、この二人は)
内心で納得し、かわいいのでよしとした。
機嫌のいいガドが嬉しげに尻尾を振る。
「そんじゃあ、ガドくんと愉快な仲間たち。一人だと参って困った俺と一緒に、タローを奪還して誘拐犯をお縄にする計画を立てようぜェ~」
「んんと、おー」
「…………」
「アゼル、おーだ」
「お、おー?」
握りこぶしを突き出す気合用のポーズをアゼルと一緒に返すと、ガドはニマッと笑って尻尾を揺らす。
本当はまだ負い目に思っているくせにな。
それでも大丈夫。お前のピンチは俺たちがどうにかするとも。
(俺たちの娘を危険な目にあわせて、本当なら約束もあって絶対に言えないだろうに……頼られると嬉しいものだ)
笑みを浮かべる俺は、くすぐったい気持ちでいっぱいである。
遠慮もなにもなくめいいっぱい頼ってくれたガドの信頼に、全力で応えよう。
この三人で、お姫様を救出するのだ。
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