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閑話 ガドと愉快な仲間たち
14(sideガド)
しおりを挟むそういうワケアリの世話も仕事である宰相であるライゼンだけは、たまに俺を見に来てくれたけどな。
アイツは俺を〝ガド〟と愛称で呼んだ。
親が教えるような常識や雑学なんかをいろいろと教えてくれたし、保護者として、叱ったり褒めたりと面倒を見てくれた。
だがそんな生活をしていると、たまに微かな視線を感じることがあった。
その犯人は何年もわからないまま。
夜だとちっとも気づけないし、昼間でも姿を見つけられない。
敵意を感じないそれが自分を見守っていることに、俺は不思議と親しみを感じ、好感を覚えていたのだ。
そんなある日。
村の人口が増えたことで起こった住居問題の解決のため、魔王が視察にやってきた。
どうも俺がいることで魔物が距離を取り、幼いリンドブルムが例年より多く生き残ってしまったらしい。
嘆願書が通れば、あの頃の魔界ではトップが出てくるのがザラだった。
どうせ書類の許可の行き着く先は魔王なので、はなっから全ての大きな仕事を魔王が請け負っていたのだ。
幼い俺にはそれがおかしいとはわからず、ずっと魔王の責務に負われ潰れそうな男に気が付かなかったが、それは別の話。
視察にやってきた魔王は、クールで物静かで、夜の闇のようだった。
しかし無表情のまま絶対に目を合わせないくせに、チラチラと俺を見てくる。
そんなことをされた俺は、すぐに魔王が視線の犯人だと気がついた。
けれどその理由がわからない。
俺と魔王には接点がない。
不思議に思い、一緒にやってきたライゼンになぜかと聞いた。
そうして知った。
魔王は俺を助けた男だった。
つまり俺にとって魔王とは、恩人なのだ。
俺は親が淘汰された自分が生きている理由を知って、魔王に興味を持った。
昔から俺はこうなので、自分から誰かに近づくのはおちゃのこさいさい。
というか、近づかないと触られもしないしよう。スキンシップが好きなんだぜ。
子どもの俺は魔王がどんな男か知るため、住居問題で通ってくる魔王に、若気の至りで飛びかかって構い倒してやった。
そりゃあ目は怖かったし、俺がよじ登るとビクリとも動かないし、取っつきにくい野郎だったけどな?
隠れてコソコソ他人の竜を様子見するやつが、悪いやつなわけねぇよ。なァ~。
事実、毒竜である俺が触れても魔王は避けたりしなかったし、されるがままだった。
思いっきりよじ登って遊んでやって、ライゼンが俺を叱って投げ飛ばしたケド、したら魔王が無言で受け止めてくれてネクストラウンド。
俺は楽しかった。
だから魔王城に住みたいって言って、リンドブルムの村とはおさらばしたワケよ。
まぁ思い返すと、割と悲惨か。
制御がうまくいかなかったとはいえ、毒薬振りまいて逃げたようなもんだから、恨まれてても仕方ねぇよな。
すっかり忘れてたぜ、そんでタローを連れて近くまでやってきた。
俺のせいっちゃ俺のせい。
タローは泣いていた。
怖い、思いをしているんだ。
自分が迷子になったせいだと責めていたら、たまらねぇ。
悪いのは人攫いのほうだってのに。
参った、困った。
タローは絶対、命に変えても救わねぇと。
でも空軍長官を辞めて魔王城にバイバイすんのは、すっげーヤダ。
「ンー、マジでヤダなァ……」
フラフラの俺は肩を丸くして、けれどタローの為に前へ進む。
自分の尻拭いをしようと城に向かってできるだけ早く空を飛んだ。
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