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閑話 ガドと愉快な仲間たち
09(sideガド)
しおりを挟む相手は語調こそ穏やかぶっているが、土色の尻尾がビチビチしていた。
ご機嫌麗しくないのかね。
安心しろよ、どうでもいいぜ。
焦げ茶の髪と、額から生えるグニャリと湾曲した角。
土色尻尾と翼は、沼地一帯を縄張りにするリンドブルムという竜種の特徴。
コイツ自体は知らねェケドなァ。
知らない魔族に親しげに話しかけられても困る。
しかしその名前の呼び方がタローのそれだったから、俺の神経はシャキンと鋭利になっていく。
大人じゃねぇからなァ。
癇癪起こすしダダも捏ねる。ガドくんは六十八歳児。
言っておくが、魔界軍の問題児は陸軍長官じゃなくて俺だぜィ。
無駄な問答も余興も全部いらねーのよ。
でも間違って民草を殺すと始末書書かないとなんで、ちゃァんと事実確認もすんだ。
幹部は辛いな。
「そんで見ず知らずのお前が、俺になんの用だァ? 俺の探してる小鳥ちゃん関連なら、さっさと要件と経緯を一分でスピーチ。そうじゃねぇなら、忙しいからバイバイ。やかってんなら骨まで溶かす、かもな」
コテンと首を傾げて尋ねる。
すると相手はカッと顔を真っ赤にし、怒りを顕にした。
「っ、お前! 見ず知らずって、俺が誰だかわかんないのかい! 俺だぞ!」
「俺って誰よ? 俺も俺だぜ? 詐欺じゃんよ」
「~~ッかああああっその自己中変わんねぇなちくしょう! 沼地のリンドブルムの村のデビーッ! 元お前んちの近所に住んでたデビラント・ノーヴァンだよッ! 余裕綽々険悪ムードのラスボス系ドヤ顔で現れたのに、なんで覚えてねぇんだよバカ野郎ッ! だから嫌いなんだよッ、バーカバーカッ!」
ほーう?
わかった。コイツ馬鹿だ。
俺は腕を組みつつ、キレてる時以外のデフォルトフェイスなニヤニヤ顔で、地団駄踏みつついわれのない罵倒をするリンドブルム──デビーを眺める。
ちなみに名前を言われても思い出せてないぜ。クックック。
恥ずかしいやつだなァ。
せっかく珍しく身構えて真剣に対応してやるつもりだったのに、煽り耐性ゼロか。
煽ってるというか本気で覚えてねーだけな。
俺は嘘は吐かねぇ。
吐けないじゃなくて、吐かねェ。って適当なクソガキ。
そもそも馬鹿なのに俺のことを馬鹿呼ばわりするってのは、どういうこった。失礼だ。
(おろん。ライゼンに馬鹿って言ったら駄目だって教えられなかったのかァ?)
ダメだぜ~。
ママの言うことはきかねぇと。
俺と魔王はついポロっと暴言を吐くから、よくライゼンに叱られてたんだ。
俺は懲りてない。
そうやって躾のなってないバカデビを観察していると、バカデビはグルグルと唸ってから深呼吸し、俺を睨みつける。
その様子を観察したが、タローの痕跡は発見できず。
周囲に仲間らしい輩の気配もなし。
「いいか、シルヴァリウス! お前の女は預かった! わかったら大人しく俺に従え。そいで俺を殺しても仲間が女を殺すから、抵抗は意味ないぞ? 俺を傷つけてもだめだ。そういう決めごとをしてから来てるからな」
「おうさ。わかったから取り敢えずはよ案内しろよぅ。そういうの初めてだけど、本でよく見る展開だからちゃァんとわかってんぜ。人質とってボコすんだろ? 優しくしろよ~」
「えっ? あ、そうか。うん、わかったぜ。うんうん」
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