本日のディナーは勇者さんです。

木樫

文字の大きさ
上 下
700 / 901
閑話 ガドと愉快な仲間たち

09(sideガド)

しおりを挟む


 相手は語調こそ穏やかぶっているが、土色の尻尾がビチビチしていた。

 ご機嫌麗しくないのかね。
 安心しろよ、どうでもいいぜ。

 焦げ茶の髪と、額から生えるグニャリと湾曲した角。
 土色尻尾と翼は、沼地一帯を縄張りにするリンドブルムという竜種の特徴。

 コイツ自体は知らねェケドなァ。
 知らない魔族に親しげに話しかけられても困る。

 しかしその名前の呼び方がタローのそれだったから、俺の神経はシャキンと鋭利になっていく。

 大人じゃねぇからなァ。
 癇癪起こすしダダも捏ねる。ガドくんは六十八歳児。

 言っておくが、魔界軍の問題児は陸軍長官じゃなくて俺だぜィ。

 無駄な問答も余興も全部いらねーのよ。

 でも間違って民草を殺すと始末書書かないとなんで、ちゃァんと事実確認もすんだ。
 幹部は辛いな。

「そんで見ず知らずのお前が、俺になんの用だァ? 俺の探してる小鳥ちゃん関連なら、さっさと要件と経緯を一分でスピーチ。そうじゃねぇなら、忙しいからバイバイ。やかってんなら骨まで溶かす、かもな」

 コテンと首を傾げて尋ねる。
 すると相手はカッと顔を真っ赤にし、怒りを顕にした。

「っ、お前! 見ず知らずって、俺が誰だかわかんないのかい! 俺だぞ!」
「俺って誰よ? 俺も俺だぜ? 詐欺じゃんよ」
「~~ッかああああっその自己中変わんねぇなちくしょう! 沼地のリンドブルムの村のデビーッ! 元お前んちの近所に住んでたデビラント・ノーヴァンだよッ! 余裕綽々険悪ムードのラスボス系ドヤ顔で現れたのに、なんで覚えてねぇんだよバカ野郎ッ! だから嫌いなんだよッ、バーカバーカッ!」

 ほーう?
 わかった。コイツ馬鹿だ。

 俺は腕を組みつつ、キレてる時以外のデフォルトフェイスなニヤニヤ顔で、地団駄踏みつついわれのない罵倒をするリンドブルム──デビーを眺める。

 ちなみに名前を言われても思い出せてないぜ。クックック。

 恥ずかしいやつだなァ。
 せっかく珍しく身構えて真剣に対応してやるつもりだったのに、煽り耐性ゼロか。

 煽ってるというか本気で覚えてねーだけな。

 俺は嘘は吐かねぇ。
 吐けないじゃなくて、吐かねェ。って適当なクソガキ。

 そもそも馬鹿なのに俺のことを馬鹿呼ばわりするってのは、どういうこった。失礼だ。

(おろん。ライゼンに馬鹿って言ったら駄目だって教えられなかったのかァ?)

 ダメだぜ~。
 ママの言うことはきかねぇと。

 俺と魔王はついポロっと暴言を吐くから、よくライゼンに叱られてたんだ。
 俺は懲りてない。

 そうやって躾のなってないバカデビを観察していると、バカデビはグルグルと唸ってから深呼吸し、俺を睨みつける。

 その様子を観察したが、タローの痕跡は発見できず。
 周囲に仲間らしい輩の気配もなし。

「いいか、シルヴァリウス! お前の女は預かった! わかったら大人しく俺に従え。そいで俺を殺しても仲間が女を殺すから、抵抗は意味ないぞ? 俺を傷つけてもだめだ。そういう決めごとをしてから来てるからな」
「おうさ。わかったから取り敢えずはよ案内しろよぅ。そういうの初めてだけど、本でよく見る展開だからちゃァんとわかってんぜ。人質とってボコすんだろ? 優しくしろよ~」
「えっ? あ、そうか。うん、わかったぜ。うんうん」



しおりを挟む
感想 215

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

一人の騎士に群がる飢えた(性的)エルフ達

ミクリ21
BL
エルフ達が一人の騎士に群がってえちえちする話。

処理中です...