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閑話 ガドと愉快な仲間たち

06(sideタロー)

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『タローがいけないことをしたら、アゼルが叱って、俺がわかるまで説明するだろう? だけど今日は、ガドくんだけだ。もしも迷子になってしまったら、タローが一人で考えないといけない』
『かんがえる……』
『そう』

 しゃるは言う。
 例えばあれがしたい、あそこが見たい、これが欲しい。

 そう思う時はいろいろと、自分で決めることがあるのだと。

 そしてそうなったら、すぐに決めずに五つ数えて考えるんだ、と言った。

 私には難しかったけど、しゃるはわかるまでゆっくりと教えてくれる。

 それから最後にないしょばなしをするみたいに、耳に口をくっつけた。

『落ち着いて見ると、ほんの少し未来が見える。本当だぞ?』
『みらい? みらいみえるのっ? すごい! わたしちゃんとかんがえるのするよっ。……? ねえねえしゃる、まおちゃんは五つかぞえてかんがえないよ? なんで~』
『ぐっ、痛いところを突くな。これが噂のなんでなんで攻撃か……。ええと……まおちゃんは魔王だから、チートポテンシャルでなんとかするんだよ』
『ちーと?』
『あぁ。まおちゃんは迷子になっても自分で帰ってこれるし、悪い人に囲まれてもえいやあってできる。タローは知ってるだろう?』
『おぉ、しってるよ! まおちゃんね~えいやあってしないくても、おててをこう、ホイホイってするの。そしたらがおがおがドーン!』
『……うん。タローはドーンできないから、ちゃんと考えないといけないんだ』

 ないしょばなしが楽しくてはしゃぐと、しゃるは困った顔で笑っている。

 つんつんと頭をつつかれて、しゃるをじっと見つめた。なでなでもしてくれる。

 しゃるは優しいおとうさん。

『ガドくんの言うことを聞いて、離れないこと。知らない人について行かないこと。なにかあったら、助けが来るまで大人しくしていること。迷子になったら、そこから動かないこと。……俺と約束、守れるか?』
『まもるっ、わたしはしゃるが……んとね、お、おとうさんがすき。いいつけをまもるよっ。だからいってきますのぎゅーとちゅー、わたしにもして~っ!』
『あははっ、ようしいい子だな? タローは。行ってらっしゃいのハグとキスは、アゼルとお前にしかしない。俺もタローが大好きだよ。行ってらっしゃい』

 しゃるのお話する時の声はとっても優しくて、甘くはないのに、ずっと聞いていたくなる。

 だから私は嬉しくなって、守るよと笑ったんだ。

 いつもまおちゃんだけが貰えるしゃるの行ってらっしゃいを貰って、ゆびきりげんまんっていう約束の誓いをした。

 がどくんがとっても尻尾をびったんびったんさせていたけど、あげないよ?

(約束、うーん。いち、に、さん、し、ご。私、考えた!)

 ポワポワとお城を出る前の出来事が引っ込んで、私は五つ数えて、しっかり頷く。

 それからりゅーじんさんに向き直って、首を横に振った。

「りゅーじんさん、ごめんなさい。やっぱりわたしは、いかないでいます。まいごになったらうごいちゃだめって、しらないひとにもついていっちゃだめっていわれてるの」
「え?」

 自分でどうするか考えたことをお話して、私は優しいりゅーじんさんに、ぺこりと頭を下げる。

 りゅーじんさんは驚いて、少し機嫌が悪くなったような気がしたけれど、頭を下げていた私は気がつかなかった。



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