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閑話 ガドと愉快な仲間たち

03(sideガド)

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『頼りまくって甘えまくって、仲間は頼られまくって甘やかしまくる。そういうもんだ』
「そーゆーもんだー?」

 事件後に教えられただけなスウェンマリナでの血みどろ瀕死事件を繰り返すまいと、しっかり言い聞かせる。

 俺は強いが魔王を基準にすると腕一本ぐらいだから、完璧には守れねぇのよ。

 魔王城は平和だけど、魔界は基本乱暴者が多い。

 タイマンである決闘では、死傷者を出してもお咎めなし。負けたヤツが悪い。

(むふん。早めに言い聞かせねぇとなァ。そうそう事件に巻き込まれることはないと思うが、用心に越したことはねぇぜ)

 珍しくそれなりにちゃんと考えた俺は、鼻歌交じりにフォレクスリールの街を目指した。



 幻惑の森と沼地の間にあり、城下街よりいくらか離れている自然豊かな街──フォレクスリール。

 街のど真ん中に巨大な木が生えていて、その魔力に惹かれた森林に住む魔族が、多く暮らしている。

 魔王城から徐行で一時間。

 俺とタローは目的地であるフォレクスリールに、恙無く到着した。

 ここの魔族の強さは城下街程じゃないが、そんじゃそこらの野良魔族よりは断然強い。

 奴らも定員に限りのある街の居住権をもぎ取ってるかんなァ。

 安心しろぃ。俺は勝てるぜ?

 たぶんタイマンの決闘組まれても住民全ての魔族に勝てる。
 ククク。連続は無理だけども。

 悪戯好きの魔木トレントや、巨大ミミズのワーム。
 鹿頭に鳥の翼を持つペリュトンや、鳴き声で生気を奪うシュリーカー。

 森林に住む魔族が木造と漆喰とレンガ造りの街並みを、ゾロゾロと闊歩する様は、活気があった。

 それにしこたま大興奮したタローは、目ん玉をひん剥いてワーキャーとはしゃぎ倒す。

 気持ちがわかるので好きに騒がせておいた。うろちょろしねぇなら構わねぇ。

 タローが落ち着くと、ここからがミッション開始である。

 商店街の入口の隅で、俺たちはシャルから託された買い物リストと街の地図を見つめ、ショッピングプランをたてていた。

 プランを立ててから行かねぇと、後でたっぷり遊ぶ時間ができねぇだろ?

 だからこれも当然なのだ。
 なんでもかんでも愉快にするのが俺の生き様よ。

「ザラ紙、羽ペンとインク壺、を入れれる筆箱。それから背負える鞄で、翼に当たらない高さのもの。動きやすい靴と服、外套。最重要事項は長く大事に使えるように、お気に入りを見つけること。ヒントはときめき。──以上、シャルメモより」
「はい! がどくんちょーかんっ。しゃるがかっておいでってしたのから、わたしのすきすきってしたのをえらぶの? しますかっ?」
「そそ、概ねそのとォり。シャルは選ぶ物の条件をつけたけど、タローが胸キュンしたものなら条件と違っても買っておいでってこったな~。ンー。シャルは好きなものなら大事にできるだろ? って言ってんだぜ」
「ん~! りょかい、です! もくひょうは紙とぺん~!」
「クックック、文具屋はそっちじゃねェなァタロー新人軍魔くん?」
「うひぅっ! え、えへへ……!」

 フォレクスリールは昔よく遊びに来てたから、変化の緩やかな魔界においてまだまだ俺の庭。

 出張街ブラ空軍の長官とちびっこ新人軍魔は、初めてのおつかいにウキウキだ。

 タローはいつも、部屋の外を散歩する時シャルの肩車で移動してる。

 けれど今日は珍しく自分で歩きたいと言い出したので、走り出すタローを追いかけ、俺は機嫌よく街を歩き出した。



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