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十三皿目 ラブリーキングに清き一票
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しおりを挟むそうして丸く収まり、平和に帰ってきた魔王城。
そこには俺が出かける前なんて目じゃない程の惨状が、眼前に広がっていた。
なんてことだ。
全く平和じゃない。
部屋の壁は優秀な作業員の黒人狼たちが塞いでくれていたが、室内の大惨事は壁以上である。
「貴方は魔族よりも短気なのですから、ちゃんと反省してください。我が主の私室の壁を破壊して、殺され趣味な天王様とやり合うなんて、言語道断です。修理費用はお給料から引いておきますからね?」
「ウィッス」
まずは魔法少女な衣装のまま床で正座する、ボロボロのリューオが目に入る。
そして彼の目の前で仁王立ちしつつニコリと微笑むライゼンさんが、お説教をしていた。
極めつけは元の姿に戻っているグウェンちゃんが、回復すらできず、焼け焦げて床に倒れ伏している。
ニヤけているのが恐ろしい。
あれは本物の変態さんだ。
それからベッドの上を見てみると、この世の終わりかのように泣いているタローがいた。
「しゃ、しゃるぅ~っまおちゃぁぁ……っ! どこぉぉ……っ? わたっ、わたしおいて、おいてかないでぇぇ……っ! ぐすっ……うぇぇんっ……!」
視線をずらすと、そのタローをアリオ、キリユ、オルガの信号機カラーな竜人三人組が囲んで、オロオロと慌てている。
「や、やばいよ~ッ! 一発芸も歌もダンスも駄目だぜアリオぉ!」
「だーッ! 諦めんな! 魔王様のお嬢さんだぞっ!? 泣かせたまんまだと叱られる~っ! どうして貰ったお菓子を全部食ったんだよオルガァ!」
「やめられない止まらないからに決まってんだろーッ! キリユ、ピカピカしてやれよっ」
「そうだそうだッ! 光れよキリユ!」
「いや俺雷魔法使いなだけで光らないしっ! お前ら勘違いしてるけど、ピカリネズミの魔族じゃねえからなーっ!?」
「「な、なんだってーッ!?」」
「もおおぉクエレブレだよッ! 竜だよッ! 空軍の軍魔だって知ってるだろッ! 万策尽きて現実逃避すんなようっ!」
俺が対価として支払ったお菓子は、全部食べてしまったらしい。
涙する子供の扱いがわからず、光ることを強いられたキリユが、うっかりバチバチッ! と電気を発した。
「ひぐっ……! ば、ばちばちしたぁぁぁぁっ! うわぁぁぁんこわいよしゃるぅまおちゃ~っ!」
「「「うっうわぁぁぁんっ!」」」
驚いたタローが更に泣き出し、状態は悪化だ。
最終的に三人が抱き合ってタローと一緒に泣くものだから、収集がつかなくなっている。
狼状態のアゼルとその頭の上で窓の外から中の様子を伺う俺に、誰も気が付かないほどのカオスだ。
「……これは……早くなんとかしないといけないな……」
ストン、と小さめのテラスに降りて、どこから手を付けようか、と悩む。
親としては取り敢えず、タローを抱きしめて安心させてあげるところから始めないとだ。
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