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十三皿目 ラブリーキングに清き一票
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しおりを挟む背中から生える小さな翼と、肉球が魅力的な手足と猫耳が愛らしい、アルプ魔族のアメリアさんだ。
膝上丈のミニスカに体にフィットしたトップスと、ツインテールがよく似合っている。
男とは思えないほどの美少女だ。
ツリ目で澄まし顔のユリスとはまた違う丸目でニコニコした彼女に、観客の歓声から男な部分が滲み出ていた。
しかしセリフは全くかわいくない。
みんな、なんというか、掘られたいようだ。ギャップ萌えというあれだろうか。楽しそうだな。
アメリアが手を振りながら花道の一番奥にやってくると、俺の大体目の前になった。
「あたしに投票してくれたら、いい夢見せてア・ゲ・ル」
チュッとトドメに投げキッス。
瞬間沸騰で沸き立つ会場内。
観客が花道にポイント代わりのコインを投げ込むと、スタッフが大きなトンボで回収した。
集計すると、舞台の壁に表示されている合計ポイントが変動する。
舞台に戻ったアメリアは、一位のアゼルたちにドヤ顔だ。
返答はアゼルとキャットが無言で揃って中指を立て、ゼオは微動だにしていない。
俺はといえば投票の仕方がわかったので、どうやってコインを人に当てないように全部投げ込もうかと、しばし思案中である。
(うぅん……上手投げか、下手投げか、それとも水平投げか……)
いずれにせよ完璧に、かつさり気なく清き一票を投じなければならない。
それもアゼルにバレないようにだ。
ふふふ、これは重大任務だな。
お察しの通り、アゼルが出演する初めてのイベントということで、俺は些か浮かれていた。
そうこうするうちに益荒男ピーチの個性的なメンツが出揃い、アピールタイムが終わってしまった。
二位のチームだけあって元々人気があり、ホームグラウンドなのか、最終的にアゼルたちのチームのポイントを抜いている。
特にピンキーという、あのアゼルと戦っていたらしい胸派のオカ魔さんは、圧巻だった。
ボディビルダー並の鋼の肉体に赤いドレスを纏い挑発的にポージングをキメる彼女は、まさにアマゾネス。
彫りの深いハリウッドスターのような威厳のあるイケメンなのに、女性口調なのは驚きだ。
俺としてはあぁ言う装甲、じゃない。筋肉に憧れがあるので、筋トレ方法を聞いてみたい。
なかなか筋肉が大きくならないのが、密かな悩みだからな……。
魔界にはプロテインなんてないから困る。
『流石は魔界のバラ園の女帝、ピンキーさん率いる益荒男ピーチ! これまでの競技で開いた点差を、逆転させてしまいましたッ! こうなってはトリの暫定一位KMwithF、ここで挽回を図らなければいけません……ッ! 実に熱い展開ですね! ではではどうぞお三方、お願いしますッ!』
──このアピールでの得点で、優勝チームが決まる。
胸が熱くなる展開に会場も司会も熱狂の悲鳴を上げ、舞台から進み出たアゼル、キャット、ゼオの三人に、期待の視線が突き刺さった。
待ってましたな気分の俺だ。
チーム名の詳細は不明なので、今度聞くことにした。
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