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十三皿目 ラブリーキングに清き一票
28(sideゼオ)
しおりを挟む「アァン!? あんたそんなに美味しそうなお嫁ちゃん持ちなんて、ズルいわぁぁぁッ! 黒髪短髪の男前なんてオカ魔の大好物じゃないっ! スケベな男が嫌いな男色家なんていないわよぉっ!」
胸筋とドレスの間からフリフリの花柄ハンカチを取り出したピンキーは、それを噛み締めて叫ぶ。
もうやめてさしあげろ。
ただでさえあの男はスケベな嫁なのだ。
シャルがこの場にいたら、丸くなって動かなくなってしまう。
哀れすぎてため息しか出ない。
そんな空間に、空気を読んだのか──カンカンカーンッ! と決戦前発表の終わりを告げるゴングが鳴り響いた。
『はぁい! ここまでで決戦前発表は終わりましたので、胸派と足派の争いも一旦終了してお色直しどうぞ~! ちなみに私はどちらかというと足派なので、踏みつけられたいですね!』
「あんたには聞いてないわよノンケ眼鏡ッ! 掘るわよ」
『ひぇぇ……』
女装コンテストなのにノーマルだったらしい実況の声に、ピンキーは重低音でクイッと指を曲げてみせる。
青ざめた実況が尻を押さえ、震え上がった。こちらもなかなか哀れだ。
「聞いたっ!? イケメンの乳首で調教プレイよ調教プレイ!」
「ヤァンダァ~っあたしも調教されたいぃんっ、アゼリーヌ推しになっちゃうっ!」
「っていうかなんかアタシ、雄っぱい舐めてたきがするワ……! 見た目や触り心地じゃないのよ、大事なのは感度なのねっ!? エロスなのねっ!?」
「待ってよピンキーの乳首がいつ感度が悪いって言ったの!? 揉みごたえがあって敏感なら、あの爆乳はパーフェクトよっ!」
「キャァ~ッ! 興奮しちゃう!」
女性の気位の高さと男気を備えた、手の付けられない生き物であるのが、オカ魔という集団だ。
最終決戦前のお色直しとなり、騒ぎ立てる観客。
黄土色の悲鳴をあげながら雄っぱい談義に花を咲かせ始めた彼女たちを一瞥して、ゼオは廊下にあったドリンクブースで、アイスブラッドでももらおうと動き出した。
一時避難とも言う。
永久に避難したい。
「アゼリーヌ様、なんぞ飲み物でも飲みなんすかえ」
「結構よ。勝利の美酒に酔いしれるのは、おブス共を叩きのめしてからだわ」
「ちょっと聞こえてるわよ小娘ッ! よくも言ったわね!?」
「事実を言っただけじゃない! 初代ラブリーキングはこのアタシなんだからっ!」
「ムキィィィ~~ッ!」
──ああ……主は、完全にあっちの世界に染まってしまった。
ノリノリの主に一つ頷く。
この程度で動じていたら、この主の部下は務まらないのだ。
嫁に関わると脳がバグる以外は自由に動かせてくれるし話もわかる、いい王である。
ゼオはすっと振り向き、途中からずっと不機嫌そうに眉間にしわを寄せ、自分を睨みつけていた同じ副官──キャットにも、飲み物が必要か尋ねた。
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