上 下
676 / 901
十三皿目 ラブリーキングに清き一票

28(sideゼオ)

しおりを挟む


「アァン!? あんたそんなに美味しそうなお嫁ちゃん持ちなんて、ズルいわぁぁぁッ! 黒髪短髪の男前なんてオカ魔の大好物じゃないっ! スケベな男が嫌いな男色家なんていないわよぉっ!」

 胸筋とドレスの間からフリフリの花柄ハンカチを取り出したピンキーは、それを噛み締めて叫ぶ。

 もうやめてさしあげろ。
 ただでさえあの男はスケベな嫁なのだ。

 シャルがこの場にいたら、丸くなって動かなくなってしまう。
 哀れすぎてため息しか出ない。

 そんな空間に、空気を読んだのか──カンカンカーンッ! と決戦前発表の終わりを告げるゴングが鳴り響いた。

『はぁい! ここまでで決戦前発表は終わりましたので、胸派と足派の争いも一旦終了してお色直しどうぞ~! ちなみに私はどちらかというと足派なので、踏みつけられたいですね!』
「あんたには聞いてないわよノンケ眼鏡ッ! 掘るわよ」
『ひぇぇ……』

 女装コンテストなのにノーマルだったらしい実況の声に、ピンキーは重低音でクイッと指を曲げてみせる。

 青ざめた実況が尻を押さえ、震え上がった。こちらもなかなか哀れだ。

「聞いたっ!? イケメンの乳首で調教プレイよ調教プレイ!」
「ヤァンダァ~っあたしも調教されたいぃんっ、アゼリーヌ推しになっちゃうっ!」
「っていうかなんかアタシ、雄っぱい舐めてたきがするワ……! 見た目や触り心地じゃないのよ、大事なのは感度なのねっ!? エロスなのねっ!?」
「待ってよピンキーの乳首がいつ感度が悪いって言ったの!? 揉みごたえがあって敏感なら、あの爆乳はパーフェクトよっ!」
「キャァ~ッ! 興奮しちゃう!」

 女性の気位の高さと男気を備えた、手の付けられない生き物であるのが、オカ魔という集団だ。

 最終決戦前のお色直しとなり、騒ぎ立てる観客。

 黄土色の悲鳴をあげながら雄っぱい談義に花を咲かせ始めた彼女たちを一瞥して、ゼオは廊下にあったドリンクブースで、アイスブラッドでももらおうと動き出した。

 一時避難とも言う。
 永久に避難したい。

「アゼリーヌ様、なんぞ飲み物でも飲みなんすかえ」
「結構よ。勝利の美酒に酔いしれるのは、おブス共を叩きのめしてからだわ」
「ちょっと聞こえてるわよ小娘ッ! よくも言ったわね!?」
「事実を言っただけじゃない! 初代ラブリーキングはこのアタシなんだからっ!」
「ムキィィィ~~ッ!」

 ──ああ……主は、完全にあっちの世界に染まってしまった。

 ノリノリの主に一つ頷く。
 この程度で動じていたら、この主の部下は務まらないのだ。

 嫁に関わると脳がバグる以外は自由に動かせてくれるし話もわかる、いい王である。

 ゼオはすっと振り向き、途中からずっと不機嫌そうに眉間にしわを寄せ、自分を睨みつけていた同じ副官──キャットにも、飲み物が必要か尋ねた。



しおりを挟む
感想 215

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

処理中です...