本日のディナーは勇者さんです。

木樫

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十三皿目 ラブリーキングに清き一票

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 そうやってゼオが化物たちの手綱を、死んだ瞳で取っている頃。

 俺は休日の暇をつぶしにやってきたリューオに、昨夜のアゼルの浮気疑惑が晴れた出来事を語っていた。

「まぁ全く嫉妬しないだとか、俺の行動になんとも思わないだとかは、寂しいは寂しいが……アゼルが安心しろと言ったので、俺は今安心に満ちているぞ。ムダ毛の処理は生え変わりだった」
「あぁうん。いや、なんつーか平和な頭してんな。テメェはよ」

 自分から聞いてきたくせに呆れ返ったリューオは、冷えた麦茶を煽り、馬鹿を見る目で見つめてくる。

 平和なことはいいことだろう。俺は日々がまったりしていればいいからな。

 ついさっきまで、俺たちはタローを含めた全員で、カプバット鬼ごっこをしていた。

 その後更に全員でシャワーを浴びたので、さっぱりしている俺たちは呑気にティータイム中なのだ。

 ちなみにカプバット鬼ごっことは、マルオを筆頭にしたたくさんのカプバットをこの部屋から見える裏庭に放ち、それを全て捕まえるだけの鬼ごっこである。

 力の弱いマルオたちは隠れるのがうまいので、難易度はそれなりに高い。

 どうしても見つからなければコウモリベルを鳴らすか、俺がお菓子だよと叫べばいい。

 癖になっている彼等はついうっかりで寄ってくるので、俺はお菓子と麦茶の用意担当にされてしまったが。

 現在のタローは遊び疲れて、ベッドでマルオを抱いて眠っている。

 タローはまだ子どもなので、カプバットやガドのような精神年齢の幼い者とは気が合うようだ。

 そこにガドが入っているのは、最早ノーマルなのでツッコミ無用。
 一応義理とは言え、叔父と姪だからな。

 閑話休題。

 のんびりしている俺は毎日午後は休みなのだが、リューオは違う。

 せっかくの休みにユリスを誘ってデートには行かないのかと尋ねると、今日は用事があると言われたそうだ。

 それでリューオは浮気かと詰め寄ったらしいが、ふざけたことを言うなと殴られたとか。

 俺にアゼルの浮気疑惑の話をしてきたのは、そう言う経緯だったり。

(ふふふ。浮気疑惑は晴れたぞ。アゼルと俺は変わりなくだ)

 冷えた麦茶を飲みながら、昨日のことを思い出す。
 互いに声を殺す緊張の中での行為は、気が気じゃなかった。

 しかし最悪俺が隠密スキルを使ってタローから見えなくなれば誤魔化しは効くので、久しぶりに盛り上がった夜だ。

 俺たちは平和だ。常に平和だ。ラブラブだ。……ちょっと照れる。

 今日も朝から仕事に出ていったアゼルを想い、俺は少しだけへらりと頬を緩めた。


「ちなみにだけどよォ……魔王のスネ毛をツルッツルにしてやったのは、この俺だかンな。確か、女装コンテストに出るだとかなんとか、トチ狂ってやがったような……」

「生え変わりだと言ったじゃないか!」


 が、直後。ガガンッ! とショックを受け、頭を抱えて震え上がる。

 なんということだ。
 せっかく解決した話をこともなげに穿り返すなんて。

 新たなトンデモ問題をノーガードの俺に投げつけてきたリューオに、俺はつい大きな声を出してしまった。

 ──あぁもう、なんでそういう話を今するんだ……!

 もう俺はアゼルの知られざる性癖にポジションチェンジを考えればいいのか、自分もその道を一緒に歩いてあげればいいのか、わからなくなったじゃないか……!

 蹴りの威力が上がると思って、スネ毛は剃ったんだぞ! ツルツルしている!

 朝シャワーを浴びた時に、こっそりカミソリで剃ってみたのだ。

 ツルツルの自分を省みて、本当は女装の為だったという事実に、なんとも言えない感情が渦巻いた。

 何度でも言うが、今の俺は女装するわけでもないのにツルツルなんだぞ。



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