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十三皿目 ラブリーキングに清き一票
03(sideアゼル)
しおりを挟むしかし向かい側に座るライゼンは、虚ろな瞳のままにため息を吐いてジトーっと俺を見つめた。
「そう言われても現在進行形でキス魔事件を根に持ち続けていますよね。挙句ガドに好感度負けすることを相当不安がって、普段なら絶対やらない女装なんてものに一も二もなく食いついている時点で、魔王様のどこらへんが余裕綽々なのか……皆目見当がつきませんよ」
そしてしれっと俺に言葉のナイフを多方面から的確に投げつけてきたのだ。
チクショウなんてやつだ。
こいつ人が広くなった心で隠していたことを、見抜きやがった。
「おいライゼン! そういう俺がシャルを好きすぎて必死みたいなこと、言うな! 誰かが聞いてて余裕がないとバレたらどうすんだよ! そうなったら責任取れよ! 責任取って俺を捨てるのはまだ早いって説得しろよ!」
「もうほら想像だけで涙目になってるでしょう!? バレたらもなにも周知の事実、いや羞恥の事実じゃないですか!」
「やめろ言うな! だから俺はスリット深めのちゃいなどれすって奴で悩殺足チラしてシャルにベタ惚れさせるんだよッ! ハイヒールと真っ赤な口紅を用意しやがれッ! お気に入りの紐パンで勝負だ舐めるなよッ!」
「なんですかその妙に具体的な女装コンセプトッ! 絶対にマルガンの入れ知恵ですねッ!?」
──もちろんそうに決まってるだろうが!
叫びながらギャーギャーとうるさいライゼンに〝ムダ毛はもう全部処理済み〟と言うと、ついに頭を抱えて涙目になった。
フンッ、俺を涙目にするからだぜ。
ちなみにアホ勇者に聖剣で剃らせた。
ほら、アレ魔族とか魔王特攻だろ?
切れ味抜群で毛根からごっそり浄化されて楽だったんだよ。
ハンカチを取り出し涙を拭ったライゼンは、悲壮感を漂わせる。
このポンコツ暴走状態を止めないとシャルに顔向けできない、なんて呟いて、キッと前を向いた。
馬鹿め。
止められるもんなら止めてみやがれ。
俺はアイツにかわいすぎてアゼルしか見えない! ぐらいは言わせてやるって決めてんだ。
テーブルに開いたままのイベントページを機嫌よく眺めていると、同じくのぞき込んでいたライゼンが声を上げた。
「魔王様。コレかわいさ審査とは別に盛り上げ目的でグループ対抗の競技があって、その対決の様子から審査員がポイントを足していくシステムみたいですよ? 出るにしても一人では出られません。三人必要です」
だからやめましょう、とでも言いたげな言い方だ。
だがその程度、この俺が見逃しているわけ無いだろうが。グループ対抗なことぐらい知ってる。
ふふん。ライゼンは俺が誰かを、忘れているらしい。
日々仕事を熟し時に休みを取ったりサボることもあるか、数十年休まず働き続けていたのだから、そのぐらい許されるだろ。
休んだ次の日はフル稼働するし、自分の仕事の進捗ぐらい把握してる。
当然部下の仕事の進捗も、ある程度把握してる。
なぜなら俺は、魔王だからだ。
ライゼンの言葉にも動じず、ソファーに深く腰掛けたまますまし顔で指を指す。
「俺は魔王だぞ? 部下を連れていけばいいんだろうが。まずはライゼンだろ? あと一人どうするか……」
「はい?」
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BL
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