本日のディナーは勇者さんです。

木樫

文字の大きさ
上 下
650 / 901
十三皿目 ラブリーキングに清き一票

02(sideアゼル)

しおりを挟む


 城下街で行われるこのイベントは、いくらか前に俺のもとへ実行委員会が許可を求めて、謁見しにきたヤツだ。

 その時は特に深く考えずに許可したんだが、今になると意味を持つ。

 こうして雑誌に告知が載っているのを最近発見して、俺はコレだ! と目が覚める思いだった。

 ふっ、俺も成長しているんだぜ。

 対症療法より原因を解決。つまり相手を追い払うより、自力向上ってわけだ。

 シャルがのほほんとしているので文句を言われないとはいえ、このままいつまでたっても変わらねぇのはダメだ。

 シャルに近づくやつを全員威嚇していたら、アイツの交友関係が閉じてしまう。
 それは良くない。

 俺は仮に大事な奴らとシャルを比べると、どうしたってシャルしか選ばないが……アイツはそうじゃないからな。

 気に食わないことだけど、シャルはみんなに好かれたいんじゃなくて、みんなを好きでいたいんだよ。

 有り体に言えば、嫌われていても嫌いじゃない。

 まぁ酷い話だが、俺を好きな奴は好きらしい。好みが合うということだから、とか。

 見ていてわかったことだと、殴られても罵倒されても、特に嫌いにならない。

 そんな好きたがりでも、自分以外をそうされるとすぐに嫌になりやがるきらいがある。

 要するに俺を嫌いな奴は嫌いなんだぜ。
 ある意味でわかりやすい。

 しかしそれは俺以外の奴らにも当てはまる。
 即ち、俺が親しい奴らまで威嚇すると、そいつ等が傷つくので嫌になるわけだな。

 ……嫌になられるのか、……。

 ま、まぁ、俺は温和な魔王で昔と違い成長した今は非常に心が広いから、そういう考えを尊重してやるんだ。

 別にドンドン増える独占欲で束縛が強すぎると、流石に好感度が下がって捨てられるんじゃ、とかな。

 危機感を感じ、今更心が広くなったフリをしてるわけじゃねえぞ。純然たる成長だ。

 嫌になられたら死にたくなるとか。
 結局今でもキス魔事件根に持ってるとか。

 そういうわけじゃねえったらねえ。
 オイそこ、余計狭くなってるとか言うな!

 兎にも角にも俺一人でアイツの欲求全てを受け止められれば、平和解決だ。

 目移りする暇がないくらい、ベタ惚れにさせてやる。
 余裕綽々の大人魔王様だぜ。

 強く意気込んで機嫌よくテーブルの格子クッキーを一つ取り、ポイッと口の中に放り込む。

 今日も最高にイイ出来だった。俺のお嫁さんは、お菓子作りがうまいのだ。

「なにを隠そうとどのつまり、アイツが一番好きなのは俺だからな。ふふん。好きなやつがいくらもいるが、その中のナンバーワンはこの俺。そこだけはこう……モヤっとした時聞いたら毎回ブレなく一番は俺だと言いやがるから、確かだぜ。シャルは素面なら嘘を吐かねぇ。ふふふん」

 ソファーで優雅なティータイムを楽しみつつ、足を組んでドヤ顔でいかに俺が好かれているかを自慢する。



しおりを挟む
感想 215

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

ある少年の体調不良について

雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。 BLもしくはブロマンス小説。 体調不良描写があります。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

皇帝陛下の精子検査

雲丹はち
BL
弱冠25歳にして帝国全土の統一を果たした若き皇帝マクシミリアン。 しかし彼は政務に追われ、いまだ妃すら迎えられていなかった。 このままでは世継ぎが産まれるかどうかも分からない。 焦れた官僚たちに迫られ、マクシミリアンは世にも屈辱的な『検査』を受けさせられることに――!?

処理中です...