637 / 901
閑話 ガオガオ勇者の意外な一面と、ご機嫌回復戦線
03
しおりを挟む昼食の配膳を頼んでから、しばらく後。
いつ呼ばれてもいいように既に厨房で用意されていたのか、あまり待たずに全員分の昼食が運ばれてきた。
今日の昼食は、ドライフルーツがぎっしりのパンに、目玉焼きの乗ったハンバーグと付け合せのソテーされた野菜がメインだ。
プラス豆のサラダと、デザートにはよく冷えたカットフルーツがあった。
それが俺の分とその半分のタローの分、二倍量のリューオの分が運ばれてくる。
ユリスにだけは特盛のペスカトーレとワイン五本が運ばれてきたのは、言うまでもない。
お客さんがいる時用の大きめの丸テーブルに、マルオたちは慣れたように配膳した。
マルオたちカプバットは戦闘力こそ低いが、物を浮かせて運ぶ念力のスキルをみんなが持っているので、従魔の仕事は苦じゃないらしい。
基本的に俺とアゼルの世話仕事以外は、全部自由時間だからな。
元気なマルオは俺にまとわりついてキャッキャと戯れてから、仲間と一緒に帰っていった。
「タロー、リューオ、ご飯だぞ~」
今度はお馬さんごっこをしている二人に声をかけると、すでに席についているユリスから、キュポンとワインの栓を抜く音が聞こえてきた。
もちろん、俺は機嫌をよくすることができなかったんだとも。
面目不甲斐ない。
友人の危機になんの力にもなれずだ。
「おー、ようしタロー! シャルパパのとこ行くかァ!」
「ぴぃ! しゃう~!」
リューオは俺の声に返事をすると、タローを小脇に抱える。
そして飛べなくともわさわさ動く翼を避けながら、ブーンとこちらまでやってきた。
しかし快活な笑顔が一歩ごとに曇っていくのだ。
到着する頃には、ボトルを掴んで直接飲んでいるユリスに笑顔のまま青ざめていた。
無邪気な笑みを浮かべ俺に向かって両腕を差し出すタローとのコントラストが、悲しいレベルである。
「しゃう、しゃう~! がお、ぴぉっ、ぴぴっ!」
「そうか。リューオお兄ちゃんに遊んでもらえてよかったな、タロー。ご飯を食べるから、シャルのお膝においで」
「ごあん、しゃぅとっ!」
リューオからタローを受け取り、よっと膝に乗せた。
なにもわかっていないタローは、俺の膝の上でそわそわとテーブルの食事を見つめている。かわいい。癒やされる。
リューオはユリスの向かい側、俺の隣あたりの席についた。
明らかにユリスのご機嫌斜めを察して、困った時は俺を盾にする気しかないということはよくわかるぞ。
「ゆ、ユリスゥ~……?」
──バシィンッ!!
「いただきます」
「ええ、えっ、えっ」
「タロー、いただきますは?」
「ぴぃ! いたぁ、ぴっ、まう!」
「うん、いただきます」
ものすごい勢いで手を合わせるユリス。
パチン、と愛らしく手を合わせるタロー、と俺。
混乱するリューオがそっと手を合わせて恐る恐る挨拶をしてから、俺の耳元にこっそりと唇を寄せる。
いけない。
それは余計にユリスの酒を進めるぞ。
「シャル、ユリスはなんで怒ってんだ……!? 今日は久々テメェに会えるから、若干機嫌良かったぜ?」
「そうだな……それは魔族がとても嫉妬深いということと、お前がタローと見たこともないような朗らかな笑顔で楽しそうに遊んでいたから、だな。それから今のこの状況もだ」
「げッ!? な、なん……だと……!?」
「ぴ? わたし、と? あそぅ、かあ、がおがお……ゆんちゃ、に、めっ?」
「んーん、大丈夫だぞ。ユリスはお前が嫌いなんじゃなくて、自分の好きな人が他の子と遊んでいるのが、寂しかっただけなんだ」
合点がいったリューオは驚愕の目で、まさか子どもに嫉妬されるとはとにやけるような、焦ったような、なんとも形容しがたい表情をした。
そうだな。俺の旦那さんは卵から無機物も動物も嫉妬の対象だから、現実だ。
魔族あるあるだ。
31
お気に入りに追加
2,662
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
えっちな美形男子〇校生が出会い系ではじめてあった男の人に疑似孕ませっくすされて雌墜ちしてしまう回
朝井染両
BL
タイトルのままです。
男子高校生(16)が欲望のまま大学生と偽り、出会い系に登録してそのまま疑似孕ませっくるする話です。
続き御座います。
『ぞくぞく!えっち祭り』という短編集の二番目に載せてありますので、よろしければそちらもどうぞ。
本作はガバガバスター制度をとっております。別作品と同じ名前の登場人物がおりますが、別人としてお楽しみ下さい。
前回は様々な人に読んで頂けて驚きました。稚拙な文ではありますが、感想、次のシチュのリクエストなど頂けると嬉しいです。
淫らに壊れる颯太の日常~オフィス調教の性的刺激は蜜の味~
あいだ啓壱(渡辺河童)
BL
~癖になる刺激~の一部として掲載しておりましたが、癖になる刺激の純(痴漢)を今後連載していこうと思うので、別枠として掲載しました。
※R-18作品です。
モブ攻め/快楽堕ち/乳首責め/陰嚢責め/陰茎責め/アナル責め/言葉責め/鈴口責め/3P、等の表現がございます。ご注意ください。
少年野球で知り合ってやけに懐いてきた後輩のあえぎ声が頭から離れない
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
少年野球で知り合い、やたら懐いてきた後輩がいた。
ある日、彼にちょっとしたイタズラをした。何気なく出したちょっかいだった。
だがそのときに発せられたあえぎ声が頭から離れなくなり、俺の行為はどんどんエスカレートしていく。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
ゆるふわメスお兄さんを寝ている間に俺のチンポに完全屈服させる話
さくた
BL
攻め:浩介(こうすけ)
奏音とは大学の先輩後輩関係
受け:奏音(かなと)
同性と付き合うのは浩介が初めて
いつも以上に孕むだのなんだの言いまくってるし攻めのセリフにも♡がつく
童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった
なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。
ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる