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閑話 ガオガオ勇者の意外な一面と、ご機嫌回復戦線

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「うん、魔力はないけど霊力に反応があるね。間違いなくひよこは精霊族だよ」
「ユリス先生ありがとう」

 タローが生まれて数日後。

 今日は午後にユリスに種族判定装置を持ってきてもらい、一応の裏付けを行っていた。

 結果は予想通り。
 タローはこれで晴れて、魔族と人間の娘で精霊族と判明したわけだ。

 うん、どれ一つとして繋がっていない。
 それでも愛しい娘。

 ここ数日で俺の日常にタローがくっついているのが、新しい日常となっている。

 朝からお菓子を作りに厨房へ行くのだが、タローを置いて行くわけにもいかない。

 タローも連れて行くことにして、厨房の端っこに柵で囲った遊戯スペースを作った。

 そこに二日目にライゼンさんが持ってきてくれた魔界の施設の余ったおもちゃを入れ、タローを隔離。

 隔離されたタローには、柵から出てはいけないと言い聞かせる。

 けれど同じ部屋にいるとはいえ気が気じゃなく、俺は初日は作業速度が半分になっていた。
 失敗しなかっただけよくやったと思う。

 タローはいいこなので、もちろん勝手に柵からでることもなく遊んでいた。

 けれど卵状態が長く、外にあこがれを持っていたのか、俺の作業を興味津々に見つめた。

 更に一人だとさみしいみたいで、そばに来たがって仕方なかったのだ。

『ぴぃ、ぁ、……ぴぁ、ぅ……しゃ、う~……』

 ──その時のかわいらしさといじらしさといったら……!

 相変わらずかなり怪しい言葉で俺の名前を必死に呼ぶ姿に、俺はタローと同じく泣きそうになるに決まっている。

 素早く「すぐに終わるからもう少しだけ待っていてほしい」と言い、土下座した。誠心誠意土下座した。

 作業が終わって、ラッピングアンド配達部隊のマルオたちが現れると、そこには、厨房にはひっしりと涙目で抱き合う俺とタローがいたり。

 まあタローは涙目というより大粒の涙をこぼして唇を噛み締め、嗚咽をこらえるレベルだったんだが……。

 それは子どもなので仕方ない。
 些細なことでも、とても心揺さぶられる幼い情緒だからな。俺がいじめたわけじゃないんだ。

 それから俺は基本的に、タローを肩車して移動している。両手を空けたくてな。

 あと慣れるまでは目を離すと危ないし、タローは一人になると泣いてしまう。親バカではない。

 言葉も、服の着方も、食事の仕方も、色々少しずつ教えている。

 うちの子は天才だから、もう少しずつできるようになっているんだ。

 アゼルも毎日部屋に帰ってから持ち帰った書類を急いで終わらせて、タローと遊んであげている。いいパパだろう?

 なにかとタロー関連で忙しくて会えてなかったユリスに、ここ最近の出来事を全て話す。

 するとユリスは種族判定の魔導具を召喚魔法域にしまって、クッキーを一つ口へ放り入れた。

「まあ? 知らない間に魔王様とお前にひよこ娘ができていたぐらいじゃ、僕は驚かないけどね? お前、いつも後で報告するから慣れてるし」
「うっ……!」
「別にぃ? 友達なのに何日も経ってから、種族判定で呼ぶの意味わかんないとか? もっと早く言ってくれたら、僕のお下がりの可愛い服実家から送ってもらったのにとか? 思ってないんだから。ふんっ!」
「ご、ごめんなユリス、ごめんな、お前は大事な友人だ。いつも俺たちの力になってくれる素敵な犬耳美少年だとも」
「ふーんっ、ふーんっ! べっつに! 僕はなんでもかんでも、まずお前に報告して共有するのにとか! たまりたまったお悩み相談と愚痴があるとか! 思ってないっていってるじゃん馬鹿シャル! どーうせシャルもアイツも、ひよこのほうがかわいくて仕方ないんでしょ! バカばっか!」
「アイ、あぁ……、そ、それはそんなことないと思うぞ?」
「今どこ見たこのネズミめ。あのまさかな光景チラ見したでしょ? ん? んん?」
「うぁ、み、みてな、みてなくもないこともないがっ」
「お前は火急に差し迫ってない嘘ド下手くそなんだから白状しなよ!!」
「三回チラ見した!!」
「素直だね!! 三回殴ってあげる!!」
「あぅっ!」

 スペペペッ! と三回素早くお怒りのユリスに額を叩かれ、俺は情けない顔になり額を手で押さえる。

 痛くないが、友人に叱られるのは攻撃力があがるのだ。辛い。

 ──そしてあのまさかな光景、とは。




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