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十二皿目 卵太郎、改め

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 いつか言ったように、俺はアゼルより先に死ぬ。人間だからな。
 順当に寿命が来るなら、必ず先に死ぬのだ。

 そうするとアゼルは一人になるが、あいつはそれでもいいといった。

 天使に襲われた時のこと。

 俺が一度死んだと聞いただけで、声も出せず真っ白になって震えていたくせに、諦められない証明をするんだと言っていた。

 俺はそれが嬉しいし、もうわがままだからと口をつぐむこともない。

 なぜかアゼルは、俺が格好悪く甘えてすがり付いてダダを捏ねたほうが、驚く程機嫌がいいんだ。

 俺は恥ずかしいんだが……。そんなアゼルだから、な。
 ひとりぼっちにさせるわけにはいかない。

 俺の他にも、アイツが愛する人がいればいいと思った。

 その、他の恋人だと死んでいたってきっと俺は嫌になるから、できれば俺も愛している人だと嬉しくて。

 そうなるとそれは二人の子どもだろうな、と早々に気がついていた。

 そしてそれは俺があげられないものだ、生まれつきそう決まっている。──はずだった。

 タローは、神様なのかもしれない。
 大袈裟か? でも、無神論者の俺も、神様の存在を信じかけてしまった。

 突然、あんなにかわいらしい子が、俺たちのもとへやってきた。

 卵の頃からペットとしてかわいがってはいたが、それだけじゃない。

 明確な人格を持つ彼女とともに過ごすと、もうそれを超えて、たまらなく愛おしいのだ。

 頭をなでると喜ぶところも、落ち着きなくはしゃぐところも、アゼルに似ているような気さえする。

 だけどアゼルと似ていないところもあった。
 明るく素直な性格で、表情豊かな彼女はなんでもポジティブに捉える。

 アゼルは彼女のそういうところを、俺に似ているから、憎めないと言っていた。

 じゃあ──愛してしまわない、わけがない。本気だぞ? 彼女を大切だと、本気で感じてしまったから。

 もちろん、親になんてなれるのかと思った。生き物を育てるのはたいへんだ。

 子どものやることを耐えられず、怒るかもしれない。嫌になって酷いことを言ってしまうかも。

 当然生活は子どもをメインとしたものになり、今まで通りの時間なんてないのだ。

 生き物を育てるというのはそれだけ自分の時間を費やして心を配らなければならないとわかっている。

 世のお父さんお母さんの苦労は、子どもだった大人だからわかるとも。
 他にもたくさんの懸念材料がある。

 ……でも、俺は一緒にいたい。


『普通は孵した卵が魔族だったとしても、然るべきところに届けておきます。今からそうすることもできますが……いいんですね?』


 タローの今後の身の振り方を決めている時、ライゼンさんは心配そうにそう言った。

『後悔することが、あるかもしれません。私は申し訳ないですが……タローより、貴方様と魔王様が大事なので。負担になるなら、すぐにでも施設へ躊躇なく送ることができますよ』

 ライゼンさんの優先順位はハッキリとしている。それを、俺の代わりに行使してもいいと。



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