631 / 901
十二皿目 卵太郎、改め
14
しおりを挟むいつか言ったように、俺はアゼルより先に死ぬ。人間だからな。
順当に寿命が来るなら、必ず先に死ぬのだ。
そうするとアゼルは一人になるが、あいつはそれでもいいといった。
天使に襲われた時のこと。
俺が一度死んだと聞いただけで、声も出せず真っ白になって震えていたくせに、諦められない証明をするんだと言っていた。
俺はそれが嬉しいし、もうわがままだからと口をつぐむこともない。
なぜかアゼルは、俺が格好悪く甘えてすがり付いてダダを捏ねたほうが、驚く程機嫌がいいんだ。
俺は恥ずかしいんだが……。そんなアゼルだから、な。
ひとりぼっちにさせるわけにはいかない。
俺の他にも、アイツが愛する人がいればいいと思った。
その、他の恋人だと死んでいたってきっと俺は嫌になるから、できれば俺も愛している人だと嬉しくて。
そうなるとそれは二人の子どもだろうな、と早々に気がついていた。
そしてそれは俺があげられないものだ、生まれつきそう決まっている。──はずだった。
タローは、神様なのかもしれない。
大袈裟か? でも、無神論者の俺も、神様の存在を信じかけてしまった。
突然、あんなにかわいらしい子が、俺たちのもとへやってきた。
卵の頃からペットとしてかわいがってはいたが、それだけじゃない。
明確な人格を持つ彼女とともに過ごすと、もうそれを超えて、たまらなく愛おしいのだ。
頭をなでると喜ぶところも、落ち着きなくはしゃぐところも、アゼルに似ているような気さえする。
だけどアゼルと似ていないところもあった。
明るく素直な性格で、表情豊かな彼女はなんでもポジティブに捉える。
アゼルは彼女のそういうところを、俺に似ているから、憎めないと言っていた。
じゃあ──愛してしまわない、わけがない。本気だぞ? 彼女を大切だと、本気で感じてしまったから。
もちろん、親になんてなれるのかと思った。生き物を育てるのはたいへんだ。
子どものやることを耐えられず、怒るかもしれない。嫌になって酷いことを言ってしまうかも。
当然生活は子どもをメインとしたものになり、今まで通りの時間なんてないのだ。
生き物を育てるというのはそれだけ自分の時間を費やして心を配らなければならないとわかっている。
世のお父さんお母さんの苦労は、子どもだった大人だからわかるとも。
他にもたくさんの懸念材料がある。
……でも、俺は一緒にいたい。
『普通は孵した卵が魔族だったとしても、然るべきところに届けておきます。今からそうすることもできますが……いいんですね?』
タローの今後の身の振り方を決めている時、ライゼンさんは心配そうにそう言った。
『後悔することが、あるかもしれません。私は申し訳ないですが……タローより、貴方様と魔王様が大事なので。負担になるなら、すぐにでも施設へ躊躇なく送ることができますよ』
ライゼンさんの優先順位はハッキリとしている。それを、俺の代わりに行使してもいいと。
41
お気に入りに追加
2,669
あなたにおすすめの小説
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
俺の義兄弟が凄いんだが
kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・
初投稿です。感想などお待ちしています。
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる