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十二皿目 卵太郎、改め

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 さっきから思っていたんだが……この二人は、どうやら会話が成り立っているようだ。

「アゼルはこの子の言葉がわかるのか?」
「あぁ? まぁな。魔物語は魔族みんなの初期能力だから、言葉は話せなくても意思は伝わる。タローのはちょっと違うみてぇだが、意思を乗せて鳴くだけだから、まぁわかるぜ」
「ぴぃ~」
「また人外チートオチか。世の中のお母さんが泣くぞ」

 当然の顔をして俺を見るアゼルと、アゼルの真似をしてキリッとしながら俺を見る少女。

 世間のお母さんが言葉を話さずただ泣くだけの赤ん坊に、どれほど「なぜ泣いているのか教えてくれ」と土下座したくなっているのか、魔族は知らないんだろうな。

 取り敢えず言葉の問題はそれで解決した。

 おいおいだが、アゼルにテレパシーで翻訳して、一般言語も教えてもらえばいいんだ。

 ……ちょっと俺もお話してみたい。
 魔物語、人間はハブられる運命らしい。

 ゴホン。とにかく名前だ。

 少女は自分の名前をタローでいいと言っているらしいが、流石にタローはだめだと思う。

 女の子らしい名前をつけてあげたくて、やっぱり違う名前を考えることにした。

 成長の早い少女は、卵として生まれてどれくらいかはわからない。

 けれど魔王城ですごした三ヶ月で、言葉を聞き取るだけは、聞き取れるようだ。

 なので俺にはピィピィと鳴いているだけに聞こえても、その返事の翻訳をアゼルに任せるとなんともスムーズだった。

 これぞ育児。
 共同作業だな。

「女の子なら、俺はたまこかな。どう思う?」
『あのね、私、外のおときこえてたから、しってるよ。たまご、私のおうちのなまえだよー』
「卵みてぇだって言ってるぜ」

 真剣に考えているがセンスがないので、少女に笑われてしまった。

 マルオの名前をつけたのが俺だということを考えると、それも必然だと思う。

「そうか……アゼルはなにか、いいのはあるか?」

 俺に名付けは向いていないと考えアゼルに振ってみると、彼は途端に苦虫噛みつぶしたような顔になった。

「ぐっ……俺は生き物に名前なんかつけたことあんの、ガドぐらいだぞ」
『がどー』
「そうなのか。いいじゃないか、ガードヴァイン。かっこいい」
『かっこいい~?』
「! 俺の名前はどうだ?」
「ん? かっこいいな」
『な~かっこいい!』

 かっこいいとアゼルに笑い掛ける。

 俺を真似て笑顔でピィピィ鳴く少女が、足をバタつかせながらアゼルの服を引いて、機嫌良さそうにした。

 そしてこののほほんコンボが決まったアゼルは、黙って目頭を押さえて震え始める。

 ふふふ。やはりさしものアゼルと言えども、幼気な愛らしい少女には癒やされざるを得ないというわけか。

 かわいいは正義だ。無敵である。

 俺はアゼルが人らしく……、と言えばおかしいが、魔王モードでも人見知りモードでもないのも、なんだかかわいらしく思う。

 少し素っ気ないが無愛想でもなく、自然体で少女と並んでいるのが嬉しくて、二倍胸がポカポカしていた。


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