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十一皿目 魔界立ディードル魔法学園
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しおりを挟むアゼルは俺の言葉に返事を返そうとしているが、なぜか言葉にならないようだ。
絞り出すような奇声をあげて、ひたすらに俺の腰を抱きしめる。
おかげで中身がでそうだが、それに気づくと返事のような声をだして緩めてくれた。
緩めてくれたが、額をスリスリと擦り付けて耳まで真っ赤だ。
なるほど。
俺が膝に座っているから身悶えられないだけで、いつもの発作を起こしているんだな。
合点がいった俺だが、質問には答えてほしい。
俺は寂しがらせてしまったしお詫びと、それから姑息な女子力アピールで、お弁当を作ってきた。
絶対にないのだが、それでも愛想を尽かされ人魚さんに乗り換えられると嫌だ。
俺はずるいのだろうか。
「だから……、アゼルが、俺以外の人の血を吸うのは、……ちょっと、嫌だな」
「あぅぁぁ……ッ!」
いつも通りの姿であるアゼルの頭をなでて、俺もぎゅっと抱きつく。
余計奇声を上げ始めたが、大丈夫か?
嫌がってはいないのか?
俺はアゼルの耳の後ろを指先で掠め、つまむ。いじけた子どものような仕草だ。
子どもっぽくて嫌になるのも、俺はいつだってお前を縛らず、自由に生きてほしいから。
それも普段からてんでできてない。
アゼルの前では俺だってクソガキ、なのだ。
「血を飲むこと自体はいいんだが、直には……うぅん。お前の獲物は俺だけがいいなんて、わがままか?」
「うひぃわがままがとうとい……っ、ごほうび……わがままちがう……せんせいしてたのにおれにだけあまえるのかわいいぃぃぃ……っ」
「唸っているがアゼル、ちゃんと聞いてくれてないな? わかった。ならちゃんとわかりやすく言うぞ」
「きいてるからこうなってんだばかがぁぁぁ……っ」
ブツブツと小声で唸るだけで、アゼルは俺の言葉に明確な反応をしてくれない。
やっぱり、アゼルにはわかり易く言わないとダメか。
そもそも話を聞いていないんだから、聞いてくれるようにしないといけないぞ。
よし、と気合をいれ、俺はアゼルの頬を掴んでぐっと自分の顔に向かって引き寄せた。
それから耳元に唇を寄せ、いつも強請る時のように声をだす。
いつもというか、夜にだが。
夜のオネダリ成功率は高いから、それを使うことにしたのである。
「俺の血、全部あげるから、頼む……お前の毒に犯されるのは、俺の役目だ。──誰にも譲りたくない」
「───~~~っ!?」
自分なりの〝吸血行為は俺限定〟を言ったつもりだ。
しかしアゼルは湯気が出そうなほど茹だったかと思うと、そのままフリーズしてしばらく帰ってこなかった。
いざ帰ってきた後は、即行動で俺の血をたくさん飲んでくれたぞ。嬉しいけれど困る。
まあ、休憩時間は超過する羽目になったことをお伝えしよう。詳しくは言えない。
──これは余談。
ライゼンさんが帰ってこなくて良かったと思った俺が、この魔王執務室は扉部分が薄くて外に音声ダダ漏れだったことに気付くんだが。
それは散々理性の飛んだ鳴き声を散々披露してからだった、というのも、付け足しておく。
職業・お菓子屋さん兼魔王の妃。
わがまま一つ言うのも、大変なのだ。
十一皿目 完食
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