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十一皿目 魔界立ディードル魔法学園
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しおりを挟むそして目の前で開始したSMプレイ。
「さっきから聞いてれば、お前はなに寝言言ってんだ?」
「いッ!?」
「好きで暴走させたわけじゃねぇって、あんなゾウリムシみたいな魔法陣書いて、ミミズがのたくった死にかけの魔力走らせててたら、当然失敗に決まってんだろ。好きで暴走させてんのと同じだろうが、あ?」
「いだだだだだッ! 痛いッ! 踏んでるッ!」
「じゃなくともアレで本気でイケると思ってたんなら、壊滅的な脳みそだぜ。頭にゾウリムシ詰まってんのか? オイ」
「ギャーッ! グッググッグリグリすんなぁッ!? ごめんなさいごめんなさいッ!」
「かかなきゃなんねぇ理由? そんなもん知るか。こっちに関係ねぇだろうが、勝手やって配慮を求めんな。チャレンジしないと成長しないって、お前弱者は一度のチャレンジで死ぬんだよわかってんのか能無しが」
「あぁぁ男の勲章が圧力ッ! やめてくれぇなんでお前がそんなことあだだだだッ!」
「失敗してあんな優しく抱きとめてくれる最高に慈悲深いやつは、学校の外にはいねぇんだよ。理屈じゃなくて気持ちだったら、俺は正直お前を見捨ててたわボケ。先生が困るだろうから仕方なく助けたんだろうが、甘ったれの飴ちゃん坊主」
「も、もうわかったからッ! 痛てぇからゆ、許して~ッ! インポになるぅ!」
「黙れ粗チンウジ虫め。お前みたいなクソガキが終わったことどうのこうのと言いやがるなら、俺が一生終わらないように二度と忘れない記憶刻んでやろうか? アァ? この汚い一物失った日なら、お粗末な脳細胞でも忘れらんねぇよな?」
「ひっ、それだけは……ッ! それだけはご勘弁をぉぉぉぉ……ッ! 忘れない! 忘れないって絶対忘れないからぁ……ッ!」
「じゃあ言うことは一つだろうが、ほら。誰に向かって偉そうにしかんなとかほざきやがってんだ? 金輪際、生意気な口の利き方ができない体にすんぞ」
「あぅあっあッアディせんせぇ!! 一週間この飴ちゃん野郎にご指導ご鞭撻いただき誠にありがとうございましたぁッ!! バカは俺ですもう決して迂闊な行動をとらないように猛省致しますぅッ!!」
「チッ。初めからそうしてろ。ゾウリムシ脳のインポ野郎」
「はぁいぃぃぃ……っ!」
……うん。長かった。
長い長い悪夢がようやく収束したようだ。
なにも口を挟めなかったぞ。
俺の旦那さんがよそのお子さんの大事な息子さんを足蹴にして、解放を条件に服従させているこの光景を、なんとすればいいのか。
「せんせぇぇぇ……っ! しっ死ぬかと思った! 辛い! たった一度の失言が俺の勲章を再起不能にするところだったぁ! 怖かったぁぁ大丈夫かなぁ俺のエレクトできっかなあうえぇえぇぇ……!」
どうにかアゼルの足に解放され、四つん這いで俺の後ろに隠れようとする涙目のクテシアス。
「木っ端微塵までは許可されてんだよ……木っ端微塵までは……。まだいける。でも一応子どもだから大目に見てやってるが、正直まだ粉砕骨折もさせてない……。ふふん、どうだ? 俺は優しいだろ?」
先程までのSMクラブの帝王然とした態度を一転させ、俺をチラチラと見ながら褒めてくれてもいいんだぞ顔で、優しさアピールをするアゼル。
「ひゃあぁあっ! 先生見て、メガネなしのほうがかっこいいよねっ!? お肌すべすべだよっ、顔ちっさい~私負けてる~! あぁう強くて優しいうえに実はかっこよかったなんてどうしよう!? それにちょっと現魔王様に似てる気もするんだっ、ブロマイド買わなきゃ~っ!」
こそこそと小声だが、俺にアゼルの素顔を大興奮で語るウィニアルト。
いいのか、ウィニアルト。
お前がアイドル扱いしている男は、ついさっきまで大事な友達の大事なものを踏んでいたんだぞ。
「……ふぅ……教師とは、大変だな……」
額に手を当て、空を仰ぐ。
世間の教師業についている人たちはすごい。
毎日こんな状況なんだろう? 俺は足元にも及ばないぞ。
爆煙もすっかり晴れていてどこまでも澄んでいる青空は、俺の臨時教師最終日を穏やかに見守っていてくれた。
──……ん。とりあえずお前たち。
みんなのところに戻って、テスト延期でグラウンド整備をしような。
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